■現地での生活と印象に残った風景

ーーたしかに、幼少期から染みついた憂いのようなものがずっと滲んでいるように思います。

玉城 一方で、運命に巻き込まれながらも意思の強さもある女性なので、悲しい顔ばかりしている不幸な女性に見られたくないと思っていました。そのあたりが、もし原作に登場するキャラクターなら表情やポーズを参考にしていたと思いますが、今回はそうではなかったので、人間らしくいようと心がけましたね。あとポイントは、オールヴェネツィアロケができたことです。

ーーオールヴェネツィアロケは、邦画初だそうですね。建造物や空気感など、岸辺露伴のミステリアスな世界観と相性がよく、とても見応えがありそうです。

玉城 毎日目覚めると「あ、ヴェネツィアだ」という感じの3週間でした。撮影もあるのでウキウキもしていられないというか、いつもどうしても根っこで仕事を切り離せない部分はありましたが、そんな中でも穏やかにすごしていました。

 ホテルにキッチンがついていたので、スーパーに行って食材を買って自炊したりもしていました。ヴェネツィアは船か徒歩でしか移動できない街で、車に乗ったりすることができないので歩くことが多かったですね。終盤は路面電車を使いこなせるようになりました。街全体がとにかく美しくて、目で見てこんなに美しいんだから、スクリーンで観たときは何倍にも美しく見えるんだろうなと思うと、私も早く大きなスクリーンで観たいですね。

ーーどんな風景が印象に残っていますか?

玉城 石畳や教会、マリアが職場として働いている仮面工房、朝起きたときに見る朝日も、夕日も、取り巻くすべてが美しかったです。ここを離れたくないという気持ちが芽生えてしまう場所なんだろうなと思いました。

玉城ティナ 撮影/杉山慶五
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