■リカルドに最も近い男を制した「型破り」なボクシング…アルフレド・ゴンザレス戦
野生の勘に基づく本能的な動きと規格外の破壊力を兼ね備えた千堂のボクシングは、「常識が通用しない」といわれる。基本を極めたリカルドのボクシングを打ち破るとすれば、やはり型破りな千堂ではないだろうか。
その予想を裏付けるのが、WBA世界フェザー級2位のアルフレド・ゴンザレスとの世界前哨戦だ。かつて一歩を倒したアルフレドと千堂の戦いは、近年の『はじめの一歩』におけるベストバウトとも評価される激闘だった。
試合序盤はアルフレドの鋭い左に苦戦する千堂だが、早々に適応して得意の打ち合いに持ち込む。一方、アルフレドも凶暴性を全面に出す「様式(モード)・死神(ミキストリ)」を解放し、試合は激しい乱打戦に。
興奮した観客の足踏みで会場が揺れる「ララパルーザ」が巻き起こる中、常識に捉われない千堂のボクシングが徐々にアルフレドの予測を凌駕し、当たらなかったパンチが当たるようになる。
そして最後は、一歩が耐えられなかったカウンターを耐え抜き、左の「スマッシュ」でアルフレドの顎を打ち抜いた。体が浮くほどの衝撃を受けたアルフレドはリングに倒れ込み、死闘は千堂の勝利で幕を閉じるのであった。
リカルドに最も近いと称されていたアルフレドの強さは、リカルド同様、基本を磨き上げたハイレベルな技術に支えられていた。そのアルフレドを下した千堂が、今リカルドに最も近い男なのは疑いようがない。
第1488話で、リカルドは千堂にこんな言葉を投げかけている。「期待していいかね?」と。
その気持ちは『はじめの一歩』読者も同じだ。リカルドは高すぎる壁だが、それでも千堂なら、その壁を越えてくれるかもしれない。まもなく始まる千堂の世界戦は、一時も目が離せそうにない。