■ウソから始まる恋にドキドキ!『この恋はNONフィクション』

 1997年『りぼん早春のびっくり大増刊号』に掲載されたのが、『この恋はNONフィクション』だ。

 主人公・鷹瀬川果林は、お嬢様育ちで世間知らずなところがあるおっとりした美少女である。ある日、果林は友人・赤松ユリの頼みで、ユリの文通相手に“ユリのふり”をして会うことになる。自分に自信がないユリは、文通相手に自分と偽って果林の写真を送ってしまっていたのだ。

 デート当日に現れたのは、まるで王子様のような男の子・茶竹良。果林はどんどん良に惹かれていく……というストーリーだ。

 本作では、お嬢様育ちの果林がとにかく可愛い。デートで訪れた水族館で子どものようにはしゃいだり、額が特徴的な魚であるナポレオンフィッシュを「おでこにょーん」と表現する独特の感性も愛らしかった。

 その後、果林と良の恋の行方には意外なサプライズもあり、結末まで目が離せない。

 本作を描く際、「とにかくロマンチックなお話がいい」との思いで制作したという種村さん。初恋のドキドキを味わいたい人におすすめだ。

■アクションも楽しめる『かんしゃく玉のゆううつ』

 1997年の『りぼん』2月号に掲載されたのが『かんしゃく玉のゆううつ』だ。種村さんにとって本誌初掲載となった本作は、忍者がテーマのラブストーリーになっている。

 忍者の末裔である主人公・山乃鰍は、秘伝の武器「紅葉(くれは)」を守る女の子だ。元気で困っている人を放っておけない性格は、どこか『神風怪盗ジャンヌ』の主人公・日下部まろんを彷彿とさせる。

 くノ一であることを隠しながら学園生活を送る鰍だが、並外れた身体能力があることから有名人だった。幼なじみ・谷本勇我は鰍のことが好きなのだが、鰍は憧れの先輩・藤崎隼人に夢中だった。

 忍者という珍しいテーマで描かれた本作は、のちのヒット作『神風怪盗ジャンヌ』に通じるところが多い。少女漫画らしい三角関係もあいまって、種村さんの読み切り作品のなかでも知名度が高いのではないだろうか。

 それにしても、本誌初登場でこの画力とストーリー展開は圧巻のひと言。当時『りぼん』で本作を見て衝撃を受け、種村さんにどハマりしたのが昨日のことのように思い出される。

 

 『神風怪盗ジャンヌ』の大ヒットで人気漫画家への階段を駆け上っていった種村さんは、連載作品が次々とアニメ化された。

 しかし、今回紹介したような読み切り作品にも、隠れた名作が多く存在する。久しぶりに当時の作品を読み返してみたが、時を経てもワクワクやドキドキは色褪せていなかった。

 爽やかな読了感を与えてくれる種村さんの作品たち。ぜひ、この機会に手に取ってみてはいかがだろうか。

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