■衝撃的だった『ニコ動』との出会い
そんな私の世界を大きく広げたのが、動画投稿サイト『ニコニコ動画』の誕生です。現実世界では感じたことのないエンタメ性が、『ニコニコ動画』の中には詰まっていました。
振り返れば、著作者への配慮や権利への理解・意識がまだまだ乏しい時代だったからこそ、生まれた熱狂でもあったように思います。現在の動画投稿・配信サイトは、本当にお上品だなと感じるほどで、ニコ動全盛期は、私にとって毎日がお祭りのような日々でした。
そんな『ニコニコ動画』に出会ったのは、高校生の頃。
兄に勧められて初めて見たのが、アニメやゲームといった既存の素材に加工・編集を加え再構築した「MAD動画」でした。高速ループや継ぎはぎなど、常人の理解を超えた編集はまさにマッドネス。かなり異常な世界でしたが、テレビでは見たことのない映像に私は衝撃を受けました。
代表例としては、マクドナルドのドナルドのMAD動画があげられます。繰り返されるドナルドの奇行ループによって頭がトランス状態に……? 百聞は一見にしかず……あの異常性は、表現しようがありません。ぜひ「ニコニコ動画 ドナルド」で検索してみてください。
他にも記憶に残ったものといえば、アクションゲーム『エルシャダイ』という作品のMAD動画です。ポルノグラフティの『アゲハ蝶』のメロディに合わせて、代表的なセリフが繰り返される動画が当時大ヒットしました。「そんな装備で大丈夫か」「大丈夫だ。問題ない。」というセリフを引用したネットミームも、この文化から生まれたものです。
意味がわからないのにクオリティが高くてかっこいい。くせになって繰り返して見てしまう。大真面目にふざけるクリエイターたちの熱が、視聴者にグルーヴ感を生みました。
『ニコニコ動画』に出会って、インターネットの面白さを知った方も多いのではないでしょうか。動画には、音楽、アニメ、ダンス、ゲームと多彩なジャンルがあり、「踊ってみた」や「歌ってみた」など様々な文化も誕生しました。
そんななかでも、私が魅了されたのは、やはり「ゲーム実況」でした。『ニコニコ動画』には、ジャンルごとのランキングがあり、その時によく見られた話題の動画を一覧で確認することができます。
ホラーゲームは、ゲーム実況においても大人気コンテンツだったので、自然と面白いホラーゲーム実況者を視聴するようになっていました。
今も第一線で活躍している「レトルト」さんや、驚かないことでおなじみの「ガッチマン」さんは、当時から人気者。酔っ払いながら『バイオハザード』をプレイする「はるしげ」さんや、『SIREN』を全力実況する「コジマ店員」さんなど、個性が光る実況者も多く、そんな方々の動画更新が、私の生きがいにもなっていました。