■愛する人の衝撃死から始まるドラマチックな展開『砂の城』
『りぼん』を代表するレジェンド漫画家・一条ゆかり氏の『砂の城』(1977年から連載開始)にも、衝撃的な死のシーンが登場する。
富豪の娘・ナタリーは、自宅の前に捨てられていたフランシスと兄妹同然に育ち、やがて結婚を誓い合う。しかし周りの反対にあい、2人は心中未遂をしたのちに周囲によって引き裂かれてしまうのだ。
フランシスを忘れられないナタリーは彼を探し続け、数年後ついにフランシスを見つける。記憶を失っていたフランシスだったが、ナタリーと再会した瞬間、記憶を取り戻し、喜びの再会を果たす。だがその直後、フランシスは目前に迫ったバスに轢かれ、命を落としてしまうのだ。
よくある少女漫画であれば、ようやく再会したナタリーとフランシスは結ばれる運命にあるだろう。しかしそこはドラマチックな展開が得意な一条氏のストーリー。簡単に2人が結ばれることはないのだ。
愛するフランシスを亡くし、生きる意味さえ見失いかけたナタリー。だが彼女は、フランシスが別の女性との間にもうけた幼い息子を自らの手で育てることを決意する。それはナタリーの人生の第2幕と言えるだろう。そして、その先に待ち受ける物語もまた、愛憎渦巻くドラマチックな展開になっていた。
王道少女漫画の『りぼん』において、主要キャラクターが死んでしまう展開は読者に悲しみと衝撃を与えてきた。
しかし主要キャラの死によって物語は大きな転機を迎え、その後のストーリーに深みを与えたことも事実である。そして、亡くなってしまったキャラたちは、いつまでも私たちの心に深く刻み込まれているのである。