『りぼん』作品で衝撃的だった主要キャラの「悲劇の死」水沢めぐみ『姫ちゃんのリボン』や一条ゆかり『砂の城』にも…の画像
『姫ちゃんのリボン』メモリアル DVD-BOX(フロンティアワークス)(C)水沢めぐみ/集英社・NAS

 今年で創刊70周年を迎える少女向け漫画雑誌『りぼん』(集英社)。多くの少女たちを楽しませてきた『りぼん』は、今も昔もメルヘンチックで可愛らしい雰囲気の作品が多い。

 とくに「りぼん黄金期」と呼ばれる90年代は、大きな瞳をウルウルさせたヒロインが、紆余曲折ありながらも、最終的に好きな男性と結ばれる幸せな展開が多かった。

 しかし、ときに『りぼん』では、主人公やその仲間たちが命を落とすといった衝撃展開も見られた。突然訪れた不幸な展開に驚かされ、悲しみに暮れた読者もいただろう。

 今回は、そんな主要人物の「悲劇の死」が描かれた『りぼん』作品をいくつか紹介したい。

 

※本記事には各作品の内容を含みます

 

■主人公のまさかの死…『姫ちゃんのリボン』

 1990年8月号から94年1月号まで連載された、水沢めぐみ氏の『姫ちゃんのリボン』。
 本作の主人公は、元気いっぱいの中学一年生の野々原姫子だ。ある日姫子は、魔法の国から来た自分と瓜二つの王女・エリカに“1時間だけほかの人に変身できる”という「魔法のリボン」をもらう。

 不思議なリボンの力を使いながら、恋愛や友情にも奮闘し、日々成長していく姫子。ドタバタ展開やファンタジーが交差した本作は全体的に明るくコミカルなタッチで描かれているのだが、実は作中、姫子はまさかの死を遂げている。

 あるとき、同級生・日比野ひかるの姿に変身した姫子は、制限時間を超えたことで元の姿に戻れなくなってしまう。そのままの姿で仲間たちと旅行へ出かけるが、旅先で激しい豪雨に見舞われ落石が発生。姫子は巻き込まれそうになったエリカをかばって、自ら岩の下敷きとなり、呼吸が止まってしまうのだ。

 誰もが絶望した瞬間、ひかるの姿だった姫子は息を吹き返すと同時に元の姿に戻る。この回は、“主人公の死”という衝撃展開、そしてそこからのどんでん返しが凄かった。悲しんだのも束の間「生き返った!」と驚愕し、喜んだ読者も多かっただろう。

 その後、本当に元の姿に戻れたのかと半信半疑の姫子が「だれか鏡かして!」と叫ぶのだが、その際、自身を指さして「これが鏡よ」と微笑むエリカの一言もまた、印象に残る名セリフである。

■萌の死とその後の“よみがえり”に衝撃を受けた『パートナー』

 1999年から連載された小花美穂氏の『パートナー』は、高校生の双子の桜沢苗・萌と、同級生で同じく双子の添田賢・武との関係を通して繰り広げられるミステリアスな物語だ。

 物語は衝撃的な展開からはじまる。苗・萌ともに賢のことを好きだった2人は、ある日、激しい喧嘩をしてしまう。翌日、仲直りしようと考えていた苗だったが、萌は交通事故で命を落としてしまい、さらにその遺体は何者かに盗まれてしまうのだ。

 亡くなったはずの萌だが、その後、苗・賢・武が訪れた旅行先で再び姿を現す。ただし、それは人間剥製(L・S・P)として蘇った姿であり、本当の意味で生き返ったわけではなかった。

 本作で命を落とすのは萌だけではない。萌を深く愛していた賢は彼女の現状と真実を知り、精神を病んで自ら命を絶ってしまう。そして彼もまた、萌のようにL・S・Pとして“蘇る”のだ。

 このように悲劇的な展開が続く本作だが、小花氏らしいユーモアたっぷりのコミカルなシーンも挟み込まれていて読みやすい。

 たとえば萌をL・S・Pに変え、苗たちを監禁した科学博士の東条光臣は、どこか憎めない雰囲気のあるイケメン天然キャラだ。また、L・S・Pとなった萌が、解読できないひらがなを書いて笑いを誘うシーンも印象的だった。コミカルとシリアスの緩急がすごいのも、本作の魅力だろう。

 それでも、不自然な形で人間が蘇ることにはやはり違和感があり、残された人々にとっては衝撃と悲しみでしかない。キャラクターの死を通じて「命とはいったい何か」を考えさせられてしまう秀逸な名作である。

  1. 1
  2. 2
  3. 3
  4. 4