「あまりに残酷すぎる…」名作漫画の主人公が直面した「母親の最期」 深い愛情ゆえのトラウマ展開の画像
諫山創・著『進撃の巨人 1』(講談社)

 漫画やアニメに登場する母親キャラの多くは愛情深く、作品に欠かせない重要な役割を担うことが多い。

 たとえば、臼井儀人氏のギャグ漫画『クレヨンしんちゃん』の主人公・野原しんのすけの母親・みさえは朗らかで明るい女性だが、しんのすけが悪さをしたときは本気で叱る。そんな母親の怒りを思い出してしんのすけがイタズラを思いとどまる場面もあり、根底には親子の愛情が存在するのが伝わってくる。

 また、皆川亮二氏によるSF漫画『ARMS』の主人公・高槻涼の母親・美沙は、息子から「ただの呑気な母さん」と思われていたが、実は圧倒的な強さを秘めていたことが明かされる。その正体はさまざまな戦場で活躍してきた伝説の女傭兵であり、まさに驚愕の展開だった。

 このように主人公の「成長」や物語の「分岐」に大きく関わる愛情深い母親がいるなかで、壮絶な死をもって物語を大きく動かした母親たちもいた。

※本記事には、各作品の核心部分の内容を含みます。

■あまりにも残酷な最期に胸が痛む

 岩明均氏の『寄生獣』は、突如地球に現れた人間の脳を奪って体を操り、人間の捕食する謎の生命体「パラサイト」との戦いを描いた物語だ。男子高校生である主人公・泉新一の右手にパラサイトの「ミギー」が寄生し、奇妙な共生を果たしつつほかのパラサイトと戦うことになる。

 ミギーの存在を隠しながら生活する新一は、ミギーが宿ったことで内面が変化しつつあり、母親の「信子」は息子の変化にいち早く気づいていた。

 信子は幼い新一を守るために大火傷を負った過去があり、誰よりも息子のことを愛している人物。それだけに突然性格が変わってしまった息子・新一について「まるで自分の子じゃ(ないみたい)……」と思い悩み、涙ぐむシーンがある。

 苦悩する母親の様子を見て、思わずミギーに寄生された真実を告げたくなる新一だが、そこはグッとこらえるのである。

 しかし、そんな子ども思いの信子は、夫と向かった旅先であっさりとパラサイトに殺されてしまう。信子の体を奪ったパラサイトは母親の姿のまま家に戻り、新一と対峙する。

 新一は、目の前にいるのは母親の姿をしたパラサイトだと気づいたものの、母親の体をした敵を攻撃することができなかった。

 ミギーと共生するうちに内面が大きく変わりつつある新一だが、愛情深い母親に対する想いは変わっていなかった。一方、母親の姿をしたパラサイトには、新一に対する愛情はかけらも残っておらず、冷酷に攻撃をしかけてきたのがあまりにも残酷な場面だった。

■兄弟が茨の道を歩むきっかけとなった母親の死

 続いては、荒川弘氏の『鋼の錬金術師』に登場するエルリック兄弟の母親である「トリシャ・エルリック」。彼女は、愛する夫ヴァン・ホーエンハイムがある目的のために旅立ったあとも、ひとりで幼い息子たちを育てた心優しく健気な人物だ。

 実は物語が始まる以前、トリシャは26歳の若さではやり病によってこの世を去った。そのため、彼女は回想シーンにしか登場しない。

 そんな母親を蘇らせるため、エルリック兄弟は錬金術師にとって最大の禁忌とされる“人体錬成”を行う。だが禁忌を犯した代償として弟のアルは魂以外のすべてを失い、兄のエドは左足を失うことになった。

 エルリック兄弟がそれだけの代償を払った人体錬成によって蘇生したモノは、母親とは似ても似つかぬ不気味な異形であり、それもすぐに息絶えてしまう。

 この失敗は、エルリック兄弟のその後の人生に多大な影響を与えることとなる。幼い兄弟が母親を失った寂しさから逃れるために行った過ちではあるが、あまりにも残酷な展開に衝撃を受けた読者は多いことだろう。

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