
『ドラゴンクエスト』シリーズ(スクウェア・エニックス)では、登場シーンではすでに故人となっているが、生前はおそらく重要人物だったであろう「偉人たち」がたびたび登場する。過去の偉人となると、『ドラゴンクエストIII そして伝説へ…』の父・オルテガも当てはまるし、ロトシリーズや天空シリーズでは過去の勇者たちが該当する。
とはいえ、作中では名前だけが登場する偉人も多く、プレイしていた当時は、いま一つ何をした人なのかが分からなかった、というケースもあった。そこで今回は、歴代の『ドラクエ』シリーズに登場した、「隠れた偉人たち」の足跡を辿ってみたい。
※本記事には各作品の内容を含みます
■『ドラクエ1』では町を作った人物…重要アイテム「ぎんのたてごと」にまつわる「ガライ」
まずは『ドラクエ1』に名前が登場する「ガライ」だ。古い言い伝えによると、彼はガライの町をつくった偉大な吟遊詩人である。
本編ではすでに故人となっているガライだが、彼が眠る墓には「ぎんのたてごと」がある。この「ぎんのたてごと」は「あまぐものつえ」と交換することになるため、ゲームクリアに必須のアイテムだ。
だが、ガライの墓は広大な迷宮であるうえ、ここには「しりょうのきし」をはじめとした強力なモンスターがおり、レベルが低いとかなり厳しい難所でもある。
それにしても、なぜこんなに広大な墓にしたのだろうか。地下にモンスターが巣食っている状態ということは、誰も墓参りに行っていない証拠ともいえるが……。
さて『ドラクエ3』では、生前のガライに会うことができる。彼はメルキドの町の宿屋に居座っており、「ぎんのたてごと? いえに おいてきたよ」と、軽く言ってくる。そんな彼の実家ではガライの母親が、“(息子は)歌を歌いながら旅をすると家を出たまま戻ってこない”と嘆いており、もしかしてただの放蕩息子だったのだろうか……なんて想像してしまう。
そもそも「ぎんのたてごと」は、モンスターを呼び寄せるアイテムで「あまぐものつえ」との交換ですぐに手放してしまう。これは『ドラクエ1』『ドラクエ3』の両方に共通していることもあり、それにかかわるガライの存在もつい忘れてしまいがちだ。
だが、ガライの実家があるところは、『ドラクエ1』ではすでに町に変わっていた。のちに多くの人が暮らすようになっているこの町で「偉大な吟遊詩人」として伝承されているところを見ると、おそらく彼が尽力し、町がつくられたのだろう。やはりガライは大きな功績を残した偉人といえる。
■無実の罪で投獄されてしまった勇者…「ガイアのつるぎ」を託してくれた「サイモン」
次は『ドラクエ3』で登場した「サイモン」だ。
孤島のルザミにて勇者一行は、予言者と名乗る老人から魔王バラモスの神殿がネクロゴンドの山奥にあること、火山の火口に「ガイアのつるぎ」を投げ入れることでそこへの道が開けると教えてもらえる。
実際にはネクロゴンドの洞窟を抜けても魔王の神殿には辿り着けないのだが、そのふもとにあるほこらで「シルバーオーブ」を手に入れるとラーミアが復活し、魔王の神殿に行けるようになる。
魔王・バラモスのもとに行くために必須アイテムである「ガイアのつるぎ」。これを所有しているのが、サマンオサの勇者「サイモン」だ。
だがサイモンは、バラモスの手下であるボストロールがなりすましていたサマンオサ王により、無実の罪で「ほこらの牢獄」に監禁され、すでに命を落としてしまっていた。
このほこらで主人公たちが彼の魂に話しかけてみると、「わたしの しかばねの そばを しらべよ……」と言う。そして白骨化した屍の横を調べることで「ガイアのつるぎ」を手に入れられるのだ。
実は、サマンオサ王になりすましていたボストロールの正体は、「ラーのかがみ」で見破る必要がある。だが、サイモンは王に弓を引くことなく潔く捕まってしまっていた。その雄姿はHD-2D版で確認することができる。
死してもなお、「ガイアのつるぎ」を守り続けたサイモンは、やはり真の勇者といえるだろう。