『機動戦士ガンダム』アムロの陰に隠れたエースパイロット「カイ・シデン」という稀有な才能の画像
バンダイのプラモデル『HGUC 1/144 ガンキャノン』(C)創通・サンライズ

 『機動戦士ガンダム』といえば、作品を知らない人でもまず最初に浮かぶキャラクターがアムロ・レイではないだろうか。アムロは鬼神のごとき活躍で過酷な一年戦争を生き抜き、「シリーズ最強」と謳われるほどの、『ガンダム』を象徴するキャラクターだ。

 しかし、そんなまばゆいアムロの陰に隠れてしっかりと戦果を挙げたキャラクターがいる。それが、モビルスーツ(MS)・ガンキャノンのパイロット、カイ・シデンである。

 作中において、実はアムロ同様にエースパイロットと呼んでも差し支えないほどの活躍をしていたカイ。その実力は、はたしてどのようなものだっただろうか。

■カイ・シデンとガンキャノンについて

 カイもアムロと同様、もともとはスペースコロニー・サイド7で暮らしていた民間人である。ジオン軍の襲撃を受けたことでホワイトベースへ避難し、人員不足の影響を受けて、主にガンキャノンのパイロットとして戦場に駆り出されるようになった。

 皮肉屋で嫌みったらしい一面を持つキャラであり、序盤においてはセイラ・マスから「それでも男ですか! 軟弱者!」と叱責されるほどの頼りなさを見せていた。だが、第28話「大西洋、血に染めて」で、親交を深めたミハル・ラトキエが目の前で死亡したことをきっかけに目覚ましい成長を遂げる。そして、激化する一年戦争を最後まで生き延びたのである。

 搭乗したガンキャノンは、ガンダムの中距離支援機としての運用を主としており、武装も射撃武器ばかりで格闘武器は持たず、懐に入られた場合は殴る蹴るといった描写が散見された。

 「ガンダムとそれ以外」といった見られ方をされがちなMSではあるものの、ホワイトベース隊の重要な戦力として最後まで活躍した機体なのである。

■戦局を広く見通し、操縦技術をもって物量をカバーする

 ここから前述の内容を踏まえて、カイの具体的な活躍を振り返りたい。まずは第25話『オデッサの激戦』でのシーンから。

 カイは「オデッサ作戦」中に会敵したジオン軍のエースパイロット・ガイアとオルテガのドム2機と激しく交戦する。

 途中ジャイアント・バズの直撃を受けるも、ヒート・サーベルによる近距離攻撃をひらりとかわしたり、背後に回り込まれても体勢をすぐに立て直したりと、見事な対応を見せる。さらに、ドムの機動力に対してハヤト・コバヤシのガンタンクが不利だと判断すると、「下がれ! 下がれ!」と即座に撤退を促し、仮にも敵エースパイロットが操る2機のドムを一手に引き受けるのだ。

 ガンタンク撤退後の交戦では、空中でヒート・サーベルの不意打ちを受けるが、これも間一髪で回避。逆に蹴り飛ばすといった対応力を見せた。

 卓越した操縦技術によって攻撃をかいくぐり、目まぐるしい戦闘の中で不利な状況にある仲間に撤退を促す視野を持つ。カイのエースパイロットとしての片鱗を覗かせた戦闘シーンの一つではないだろうか。そしてこの奮戦がガンダム到着までの時間稼ぎとなり、結果的に戦況に大きな影響を与えたのである。

 ちなみにカイはこの3話後にミハルと死別し、以降人間としてもパイロットとしても、さらなる成長を遂げていくことになる。

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