■赤井秀一復活劇

 最後は、かなり大がかりな伏線回収となった赤井秀一の復活劇を見ていこう。赤井はFBIに所属していて、黒ずくめの組織を追う優秀な捜査官だ。組織としても邪魔な存在だったので、暗殺を企む。キールを使って彼を追い詰め、頭部を撃ち抜いて殺したうえで、爆弾を仕掛けて車もろとも遺体を燃やしてしまったのだ。

 赤井はキールに撃たれる直前、「まさか… ここまでとはな…」と言い残している。この時、誰もが“黒ずくめの組織がここまでやるとは思わなかった”という意味だと思ったはずだ。

 しかし、赤井は死んでいなかった……。沖矢昴という別人になりすまし、コナンの家に居候する住人として再登場する。ちなみに沖矢の正体がまだ明かされていないときも、口癖や利き手の描写など、赤井ではないかと思わせる匂わせはいくつかあった。

 そして、赤井の復活が原作で描かれるのは、85巻収録の「緋色シリーズ」でのこと。何者かに追われるジョディとアンドレ・キャメルのもとに突如現れると、見事な銃さばきで存在をアピールしていた。

 実は、赤井の死はコナンの計画によって仕組まれたものだった。

 まずは黒ずくめの組織にキールとして潜入しているCIA諜報員・水無怜奈(本名:本堂瑛海)に協力してもらい、空砲と血のりによって銃殺を演出する。その後別の死体を車に乗せ、そのまま爆発させて燃やすという方法で、赤井の死を偽装した。それによって黒ずくめの組織の赤井に対するマークが外れ、赤井は自由に動き回れるようになったのだ。

 赤井が“まさかここまでとはな”という言葉を発したのは、コナンが先の先まで読んで計画を立てていたのに対して感心したからである。

 赤井の死が描かれたのは59巻、復活したのは85巻なので、かなり手の込んだ伏線回収だったといえるだろう。

 

 『名探偵コナン』は長期連載をしているだけあり、長い時間をかけて解き明かされる謎も多い。過去にあった些細な描写が伏線になっていることも多いので、定期的に見直したくなる。

 まだ回収されていない伏線と思われる描写も数多くあり、今後の展開で明かされるのが楽しみだ。

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