■竹中直人さんの怪演が怖い『プリズナー』
最後は、1991年放送の『プリズナー』を振り返りたい。幻のビデオテープ『プリズナー』が起こす恐ろしい出来事を描いた同エピソードで存在感を発揮していたのが、俳優の竹中直人さんである。
高橋一也さん演じる野中秀夫は、都市伝説にもなっている『プリズナー』を求め、レンタルビデオ店を回っていた。そして、ついに「ビデオレンタルナイス」という店で、廃棄寸前になっていた該当ビデオを発見する。
大興奮の野村が帰宅してさっそく再生すると、外国人男性が画面に現れビデオの説明をし始める。そして彼は、“次の案内役”として牢屋の男(竹中直人さん)を紹介する。
画面を見つめ、「ここから出してくれ」と語りかけてくる男。野中は男が自分に直接語りかけていると気づくと、男の言うがまま画面に手を伸ばしテレビの中に吸い込まれてしまうのだった。
そして、ビデオの世界を満喫した後に言葉巧みに誘導され、牢屋の中に入れられてしまう。まんまと入れ替わった男は、冷たい笑顔を浮かべて「あんたが来てくれたから俺はここから出ていける」と言うと、画面の外に出ていった。
やっと意味がわかり、焦る野中だが、時すでに遅し。男はテレビの電源を切り、野中は、未来永劫ビデオに閉じ込められてしまうのだ。ビデオ店のネオンには、野中の心を現すかのように「デレナイ」の文字が光っていた。
今でこそ同様のストーリーの作品は多々あるものの、ショートドラマの中できちんと起承転結を作り、ラストに「野中はもう一生出られないんだ……」という嫌な余韻を残すのは『世にも奇妙な物語』ならでは。そこに竹中さんの怪しい微笑、ラストで見せた何かを訴えかけてくるかのような表情が恐怖感を煽るのだ。
VHSは、テープの劣化などから今後見ることができなくなってしまうかもしれない。また、レンタルビデオ店というのも令和の今ではかなり珍しくなっている。こういう作品も、制作機会がなくなると思うと寂しいものだ。
今回紹介したエピソードの他にも名優たちが出演する恐怖回はあるが、どの“奇妙な物語”でも俳優たちが表情の一つひとつまで繊細に演じきっている。だからこそ視聴者側は物語に入り込むことができ、恐怖感が増していくのである。