■オタク活動とは切り離せない「お小遣い事情」
こうして、アニメ放送後は父親の大きなラジカセ(ほぼ私専用機)を自分の部屋に持ち込み、たまに母親のイレギュラーな声が入ったカセットテープを何度も聞いては、脳内で『ガンダム』の場面再生を楽しんだわけです。ですが、ここでちょっとした壁がたちはだかります。それが好きなアニメを楽しむのに悩ましい、お小遣い問題です。
当時のお小遣いは小学6年まで1000円、中学に上がってからは毎年500円ずつベースアップしてもらいましたが、大手メーカー品のカセットテープが1本300~400円の時代です。たくさんのアニメ音声を録音するには到底足りません。
そこで重宝したのが、ディスカウントショップやレコード店のワゴンセールで売られていた、1本100円程度の激安カセットテープ。
けれども激安品は諸刃の剣。10回も再生するとベロベロにテープが伸びる粗悪品もあり、酷い時にはテープが切れてラジカセに絡まるまでがワンセット。そのため37話の最後のマ・クベの壺うんぬんの場面で「あれは、〇〇〇〇だ!」の部分が何といっているのか聞き取れず、そこだけ何度も巻き戻し再生していたらカセットテープが切れたのも悲しい思い出です。
■まさに衝撃…『ガンダム』の打ち切り騒動
さて、全52話の予定だった『ガンダム』ですが、玩具の売り上げ不振が原因で、1980年(昭和55年)1月26日の放送で最終回。全43話での“打ち切り”が決まります。
ネットなどなかった昭和の時代。私たち一般視聴者が『ガンダム』の打ち切りを知ったのは、アニメ雑誌『アニメージュ』(徳間書店)の誌面でした。
1月10日発売の『アニメージュ』(1980年2月号)は「機動戦士ガンダム Shock 1月末で終了!! 関係スタッフ82人の証言」と題して、製作スタッフや声優などがこの件について語っていたのです。
テレビでは、第40話「エルメスのララァ」が正月明け早々の1月5日に放送されたばかりで、何も知らないファンにとって本当にショックなニュースとなりました。
周回遅れも甚だしい私でしたが、年末から年始にかけての『ガンダム』の異様な盛りあがりを見て「これは番組延長もあるかな?」「続編とか作るかも」など、能天気な願望を抱いていたのですから、「寝耳に水」とはまさにこのことです。
『ガンダム』が残り3話と知った私は、クリスマスプレゼントの前倒しで親に買ってもらった「ガンダム本」をさらに熟読。いつしかシャアやララァの姿を模写したり、カセットテープに録音したお気に入りのセリフをノートに書き出したりするようになります。オタクの卵が“ガンオタ”として、ふ化した瞬間でした。
こうして1980年1月26日、運命の「ガンダム最終回」の日を迎えることになるのですーー。