
女児向けの変身ヒロインアニメに欠かせない存在である「悪役」。アニメの悪役は見た目からしてワルっぽい人物として描かれることが多いが、女児向けアニメの場合はイケメンだったり優しかったりする人物も多い。それも、テレビの前の子どもたちがつい胸をときめかせてしまうような、妖しい魅力に溢れている。
『美少女戦士セーラームーン』は最たるもので、プリンス・デマンドやダーク・キングダム四天王などは、ヒーローポジションであるタキシード仮面に負けず劣らずの人気を博していた。
■歴代シリーズの中でもレアな獣人キャラ『スマイルプリキュア!』ウルフルン
2012年から放送された『スマイルプリキュア!』に登場するウルフルンも、獣人という珍しいジャンルのキャラでありながら、魅力を振りまいていた悪役。絵本に出てくる狼がモチーフである彼は、サラサラのたてがみ、長身で筋骨隆々の体、鋭い目線が特徴で、全身からかっこいい悪のオーラに満ちている。
これまでに人狼型の敵がいなかったこともあって初登場から話題となり、シリーズ初となる男性敵キャラの単独グッズ化という快挙を達成。アイテムは即完売し、その人気の高さを見せつけた。
作中では、悪の組織「バッドエンド王国」の幹部として仲間のアカオーニ・マジョリーナとともにプリキュアの前に立ちふさがる。野獣と化した姿でプリキュアを追い詰めたこともあり、ポテンシャルは高い。
だがその正体は、メルヘンランドに住むキュートな妖精・ウルルン。アカオーニらも同様に妖精で、絵本の中で虐げられ続ける日々に絶望していたところをジョーカーに突かれ、悪に転じてしまったのである。元の姿は、狼というより犬のようで可愛いらしい。
そんなウルフルンの魅力はクールさとコミカルさのギャップにある。
『スマイルプリキュア』はシリーズの中でもコメディシーンが多いが、バッドエンド幹部も次第にワチャワチャしていく。時には人々の笑顔を奪うためにお笑いコンテストに出場して芸人のFUZIWARAからダメ出しを喰らい、時には任務そっちのけでおもちゃで無邪気に遊び、時にはマジョリーナの薬で人間(昭和のツッパリ)に化ける。そんなおちゃめな姿が描かれるたびに人気は高まった。
そして、38話で彼の可愛さが爆発する。この回ではマジョリーナの薬で子どもに戻ってしまうのだが、プリキュアと一緒になって「だるまさんがころんだ」をして遊ぶ姿は元の姿さながらのキュートさ。ウルフルンは、悪役としての怖い姿と穏やかな妖精の可愛さが一度で二度楽しめる敵なのだ。