
横浜流星さんが江戸の出版王・蔦屋重三郎を演じるNHK大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』。本作でまさかの眉なしメイクを披露し、圧倒的な役作りでファンを驚かせたのが松葉屋の女将・いねを演じる水野美紀さんだ。
自身でも「誰だよあの妖怪。あたしだよ」と自虐的なコメントを残した水野さんだが、本作以外にもさまざまなドラマで怪演を披露し、視聴者の度肝を抜いている。
そこで、水野さんの体当たりな役作りが光る、ドラマでの活躍を見ていこう。
※本記事には各作品の内容を含みます
■あまりの自然体に気付かないファン多し? 『異世界居酒屋「のぶ」』イングリド
蝉川夏哉さんの手掛けるライトノベルを原作に、2020年よりWOWOWプライムで実写ドラマが放映された『異世界居酒屋「のぶ」』。
入り口がなぜか異世界へと繋がってしまう居酒屋を舞台とした異色のファンタジー作品で、店を訪れる個性豊かなキャラクターたちが織りなす人間ドラマや、随所に登場する食欲をそそる料理描写が見どころとなっている。
本作で水野さんはシーズン2から参戦。作中では魔女のような風貌の女性・イングリドを演じている。イングリドは長い銀髪を蓄えた老婆のようなビジュアルで、水野さんよりもかなり年齢設定は高めだ。
だが、水野さんは持ち前の高い演技力で、このイングリドを怪演。歳を重ねた女性ならではの美しさや冷静さを見せつけながら、一方で酒や甘いものに無邪気に反応したりとギャップを見事に表現し、キャラクターの魅力を存分に引き出していた。
その演技の自然さや特殊なビジュアルから、水野さんが演じていると知り、驚いた視聴者も多かったようだ。ファンタジーのキャラを演じるのは珍しい水野さんだが、異世界の住人ですら違和感なく演じ切ってしまうのは、やはり彼女の実力のなせる業だろう。
水野さんはイングリドを演じるにあたり、使い慣れない言葉や台詞回しに苦労したとインタビューにて明かしていたが、その一方で、作中に登場する料理の美味しさに舌鼓を打ったり、本作ならではの凝ったセットに感動したりと、楽しみながら撮影に臨んでいたようだ。
役柄との年齢の差などものともしない水野さんの演技力が光る、異色のドラマ作品であった。
■無機質と美しさを融合した最大の敵…『超速パラヒーロー ガンディーン』ラルー
数々の特撮ドラマが存在するなかで、パラスポーツとの意外なコラボが実現した作品といえば、2021年から放送された『超速パラヒーロー ガンディーン』である。
本作の最大の特徴は、なんといっても主人公がパラ陸上アスリートを目指す高校生という点で、彼が変身するヒーロー・ガンディーンも車椅子の意匠が取り入れられている。
そんな本作において水野さんは、作中に登場するラスボスのラルーを演じた。ラルーは主人公らと敵対するエルトロン族の女性で、半機械怪獣“ラゲルト”を操り地球の人々を襲う凶悪な存在だ。
なんと言ってもその強烈なビジュアルが特徴で、黒に赤が映えるスタイリッシュな衣装もさることながら、赤い髪の毛や瞳、宝石のようにきらめくとげとげしい頭部など、まさに悪の異星人といった出で立ちである。
さらに本作で水野さんは地球語のセリフをいっさい喋らず、エルトロン族特有の宇宙語を用いた演技を披露。鋭い眼光で相手を睨みつける姿はまさしく人類を脅かす巨悪のカリス_で、眼を発光させた怪物然とした表情も見せつけており、その凄まじい迫力には圧倒されてしまう。
だが、そんなビジュアルにもかかわらず、不思議と水野さんの放つ独特の気品や美しさを感じられるのも実に面白い点だ。
「撮影は、めちゃくちゃ楽しかった」と語っていた水野さん。悪の異星人ならではの圧倒的なカリスマ性を表現しきった、彼女ならではの怪演が光る一作だ。