■変身ヒロインの金字塔アニメ『美少女戦士セーラームーン』
続いては、変身ヒロインアニメの金字塔『美少女戦士セーラームーン』。同作は歴史が長く多種多様なセーラー戦士が登場しているが、闇落ちしたキャラといえばちびうさが印象深い。
闇落ちシーンが描かれたのは、『美少女戦士セーラームーンR』。クリスタル・トーキョーの王女であるちびうさは、幻の銀水晶の消滅が原因で故郷がブラックムーンの襲撃を受け、母であるネオ・クイーン・セレニティがクリスタルに包まれてしまったことで20世紀にきていた。
母を救うべくセーラームーンらと30世紀に戻ったちびうさは、過去の銀水晶で目覚めさせようとするも失敗し、動揺のあまりパレスを飛び出してしまう。実は、未来の銀水晶を消滅させたのはちびうさだった。決して悪意があったわけではなく、出来心で銀水晶を触った瞬間に消え去ってしまったのである。
大切なものを子どもの手に届くところに置いておくなんて……というツッコミはさておき、自分の行いで国が滅びかけるというのは相当な罪悪感だろう。ちびうさは、そんな罪悪感を読み取ったワイズマンに言葉巧みに誘導され、取り込まれてしまう。
さらにワイズマンは、孤独感につけこんで「お前は誰からも愛されていない」と心をえぐり、これをきっかけにちびうさは闇落ちしてブラックレディへと変貌を遂げてしまう。最終的にはネオ・クイーン・セレニティに覚醒したセーラームーンを通じて本当の愛に気づくのだが、多忙な両親を持つちびうさの寂しさを想うとちょっと切なくなってしまう。
さて、同作から時を経て『セーラームーンCrystal』の劇場版である『セーラームーンCosmos』では、ちびうさとはまた違う形の闇落ちシーンが描かれた。
同作は原作の最終章にあたる部分で、前後編通して新たなセーラー戦士が次々と登場しては散っていく。初期のセーラー戦士も同様で、前編の段階で悪の組織シャドウ・ギャラクティカの脅威の前にあっけなく全滅させられセーラークリスタルを奪われてしまっていた。
厳しい戦いを強いられるセーラームーンが、ついにシャドウ・ギャラクティカの頂点であるセーラーギャラクシアに辿り着いた後編。セーラー火球がやられ、味方がちびムーン、セーラーカルテット、ちびちびだけになったセーラームーンの前に、タキシード仮面を含む内外太陽系戦士が現れる。
再会を喜ぶセーラームーンだったが、戦士たちは虚ろな眼差しで攻撃を仕掛けてくる。実は、彼女たちはクリスタルで作り出された偽戦士だったのだ。ゆえに技もギャラクティカ風味となっており、これはこれでカッコイイ。セーラームーンは一度は彼女たちの攻撃を受け止めるも、辛い気持ちを堪えながら必殺技を放ち消滅させるのだった。
『プリキュア』も『セーラームーン』も、たびたび魅力的なヒロインキャラが闇落ちしているが、ダークな彼女たちが見せる表情は普段の明るさからは想像もつかないほどクールでカッコよく、ちょっとドキドキしてしまうものでもある。中には、闇落ちした姿を見てファンになったという人もいるのではないだろうか。