■女性監禁事件を描く『サニー/32』
『サニー/32』は2018年に公開された映画で、『凶悪』で監督を務めた白石さんと脚本を務めた髙橋泉さんが再タッグを組んだ作品だ。当時NGT48に所属していた北原里英さんが主演を務め、彼女がある殺人犯と間違えられて監禁されるという衝撃作だった。
本作では『凶悪』で恐ろしい犯罪者コンビとして登場したピエールさんとリリーさんが再び、犯罪者として登場する。『凶悪』ではリリーさん演じる先生にピエールさん演じる須藤が利用される構図だったが、『サニー/32』ではピエールさん演じる柏原勲が、リリーさん演じる小田武を付き従えているという、正反対の関係性だ。
主人公の藤井赤理は平凡な中学校教師。彼女はある日、「犯罪史上最もかわいい殺人犯」と呼ばれる「サニー」と間違われて、2人の男に監禁されてしまう。男たちはカメラを準備し、監禁した姿を撮影しながらその様子を配信するという常軌を逸した行動を見せる。
高圧的な柏原よりも、一見穏やかな態度でカメラを回す小田武のほうがかなり不気味だった。得体の知れなさが全開の演技で、「本当にリリーさん?」と感じてしまう。特にヤバかったのは、「サニー」の誕生日を祝うため誕生日ケーキを持ってくるシーンだ。「ハッピーバースデーサニー」と低く歌いながら、ケーキをテーブルにのせる。
そのシーンが出てくるのは序盤だが、明らかにおかしな状況で普通に振る舞う姿からは、小田の異常性が垣間見える。彼の「サニー」への屈折した愛が垣間見え、思わずゾクゾクとしてしまった。
『クジャクのダンス、誰が見た?』では、謎めいた死を遂げる父親を演じるリリーさん。穏やかかつ正義感にあふれた刑事役で、冤罪に苦悩し、娘の成長に目を細める。「イケオジ」のイメージも強いリリーさんだが、今回紹介した3作品で見せる姿はまるで別人だ。
これらで演じた凶悪すぎる姿は恐ろしく、不気味で鳥肌すら立つほどだ。「リリー・フランキー」という俳優を深く知るためには、こうした作品も見逃せないだろう。