
広瀬すずさん主演のTBS系ドラマ『クジャクのダンス、誰が見た?』で、物語のキーパーソンを演じているリリー・フランキーさん。主人公が父親の死の真相に迫っていく物語で、リリーさんは穏やかで優しい父親役を好演している。
近年では、同作のように心優しく懐の深いイケオジのキャラクターを演じるケースが増えているリリーさんだが、過去にはそのイメージを前提に見ると恐怖に慄いてしまうような怪演を数々の作品で見せてきた。
ゾッとするような表情を見せ、普段の印象とは一線を画す作品も多い。そんなリリーさんが過去作品で見せた“凶悪すぎる演技”について振り返っていこう。
※本記事には各作品の内容を含みます
■社会派ノンフィクションの映画化『凶悪』
ノンフィクションベストセラー小説『凶悪 ある死刑囚の告発』を原作とした映画『凶悪』は、死刑囚の告白から衝撃の事実が明かされていく社会派サスペンスだ。同作をはじめ、その後の作品でバイオレンス描写が高く評価される白石和彌監督による映画で、山田孝之さんが主演を務めている。
同作はピエール瀧さん演じる死刑囚の男・須藤が、「先生」と呼んでいる黒幕の存在を山田さん演じる記者・藤井に告白するという内容だ。この「先生」を演じたのが、リリーさんだった。先生は最初の登場から衝撃的。罵声を浴びせながら男の首を絞め、殺してしまう場面で初登場する。
人を殺して動揺を見せつつ、その後は嬉々として犯罪を重ねていく姿がかなり不気味だ。ひょうひょうとした態度で、死体損壊、死体遺棄、恫喝、殺人……と、挙げればキリがないほどの犯罪を須藤とともに犯していく。
人間を感電させる場面を「ヤバいねぇ」と笑みを浮かべながら見ているシーンは、不気味で恐ろしい。リリーさんがバラエティ番組などで見せる穏やかな笑顔やしゃべり方のまま、あまりにも凶悪な犯罪を進行させていくため、より恐ろしさが際立っていた。
■人の欲望を描く『SCOOP!』
『SCOOP!』は『モテキ』や『地面師たち』でも知られる大根仁監督による映画で、福山雅治さんが主演を務めた作品だ。スキャンダルを追う記者・都城静が大事件の真相に迫ってしまう姿を描き、スキャンダルを追う人間心理が鋭く描かれている。
リリーさんは静の悪友である情報屋・チャラ源を演じていた。このチャラ源は一見したところただの麻薬中毒者で、どうしようもない男だ。しかし、作品の中で独特の存在感を放っている。
静は彼を「チャラ」と呼び、若い頃からともにナンパなどを繰り返すなどさまざまな経験をしてきた。しかし、チャラは麻薬中毒が悪化していて、ろれつが回っていないこともしばしば。チャラ源はラストに向けて次第に恐怖味を帯びていくが、そんな彼の最大の見せ場は、静の部下である行川野火がさらわれたシーンだろう。
静が野火の大ピンチを助けに現れると、そこには屈強な若者たちが待ちかまえていた。静はボコボコにされてしまうが、そこにふらりとチャラが登場する。
ヘラヘラと姿を現したと思ったら、奇声をあげながらその場にいる若者たちを次々と倒していくチャラ。ボクシングのような戦い方で全員ノックアウトしてしまい、野火はあっけにとられる。
その後「静ちゃんもよぉ、いつまでも俺なんかとつるんでちゃだめだよ」と投げやりにいう姿は、普段の「余裕がある大人」というリリーさんのイメージからはかけ離れている。特に若者たちを嬉々として殴り倒すシーンはキャラクターとしてのギャップも大きく、かなりインパクトがあった。