■食べるプロから作るプロへ…百恵が掴んだキャリアと運命の恋
織田と百恵はお互いを意識するものの師弟関係を保っていたが、物語が進むにつれだんだんと目が離せない恋愛模様を展開していく。そこも大きな見どころだ。
百恵の想いも虚しく、織田は幼少期に世話になった家の娘であり、フードプロデューサーである今村可奈子(飯島直子さん)と付き合い同棲を始めてしまう。失恋した百恵はますます料理に情熱を燃やすが、二人が気になり失敗続きだ。
そんな折、フレンチレストラン「アムール」で腕を振るう高橋薫が不倫のいざこざで休むことになり、百恵は高橋の力になりたいとプチ・ラパンを辞めてアムールで働くことに。
物語の後半に入ると、次々と問題が起こりだす。織田にパリ行きの話が持ち上がり、オーナーの娘・由美が突然現れた子どもの父親を追って店を出て行き、アムールでは高橋が店を辞め、とどめには義兄の借金の保証人になったオーナーがプチ・ラパンを売却してしまうのだ。まさに怒涛の展開である。
目まぐるしく変わる環境の中、百恵は織田への想いがあふれて告白。だが、彼のパリ行きを応援し「いつかきっと私の料理に恋させてみせる」と涙ながらに門出を祝福する。そして織田は、「2年後のクリスマスにお前が作るディナーを食べに来てやる」と約束して可奈子とパリに向かってしまった。
かくしてプチ・ラパンは閉店。2年の歳月が流れ、百恵はアムールのチーフシェフに昇進していた。帰国した織田は成長した百恵と再会。店の閉店も知り、改めてプチ・ラパンと百恵の大切さに気づく。そして、パリの店を辞め可奈子とも別れてしまう。
約束のクリスマス。百恵は一夜限り復活したプチ・ラパンで織田にコンソメスープを振舞い、ついに腕を認められる。そして織田は、「この店で働かせてくれ。このコンソメスープの傍で働きたいんだ」と百恵が初めて店を訪れたときと同じセリフで告白するのだった。
同作は食べるプロから作るプロにシフトした百恵の葛藤と成長、織田との恋がバランスよく描かれており、恋愛ドラマ・料理ドラマのどちらの観点から見ても見応えがある。個人的には、最初と最後を同じセリフで繋ぐというロマンチックな終わり方が素晴らしいと感じた。
『もしも願いが叶うなら』、『眠れる森』、『逢いたい時にあなたはいない…』など90年代だけでも数々の名作ドラマに出演した中山美穂さん。現在は配信もされておらず気軽に視聴することができない『おいしい関係』だが、中山さんの魅力がたっぷり詰まったドラマなのは間違いない。