■中山美穂さんが美しい!名俳優陣の演技でクセ強キャラも魅力的
登場人物の個性が立っているのも、面白さの一つだろう。中山さん演じる百恵もそうだ。何不自由なく暮らしてきたお嬢様と聞くと、自立できないイメージを持つが百恵は違う。彼女は父の死後すぐに前を向き、プチ・ラパンで「私には頼る場所がない。だから私が私自身を頼れるようになるまでここにおいてください」と直談判する。
悲しみの中で自分を奮い立たせ、未経験の状態で厳しい料理の世界に飛び込むとはなんて度胸だろう。無謀ではあるものの、人生を変えたいときはこれくらいの勢いを持つのも必要なのかもしれない。
当時、中山さんはアイドルから俳優にシフトしていたが、同作での「人懐っこくて芯の強い女性」は役の幅を広げたといっても過言ではないだろう。様々な料理を美味しそうに食べる姿も可愛らしく、もうあの笑顔が見られないと思うと悲しさがこみ上げてくる。
唐沢さん演じる織田圭二も個性的な人物だ。彼は腕が良く料理への情熱も人一倍だが、口と態度が悪いため、事あるごとに「女はすぐ泣く」だの「死ね!」だのと暴言を吐く。今ならすぐSNSで拡散されてしまいそうな危うさだ。
一方で、借金に悩む両親からレストランに捨てられた過去を持ち、孤児として育った悲しい背景がある。その二面性こそが味わい深い。人柄の良さあふれる唐沢さんが演じることでよりギャップが引き立ち、気性の荒さもマイルドに見えてくるから不思議だ。そこにタフな百恵がガツガツ反論することで、二人の掛け合いが面白おかしいコメディに仕上がっていた。
さらに、オーナー・森完輔役の森本レオさんや、彼の娘であり妊婦の森由美役の山口紗弥加さん、百恵に片思いするシェフ・木村和馬役の草彅剛さん、織田の先輩シェフ・高橋薫役の宅麻伸さんなど、魅力的な俳優陣が脇を固めている。まっすぐな百恵と関わる内に彼らの人生も変化していくという展開は、90年代ドラマらしさだろう。