
80年代に国民的アイドルとして大活躍し、90年代には時代を彩る実力派女優となった中山美穂さん。令和になっても数々の作品に出演し変わらぬ美しさで人々を魅了していたが、2024年に54歳という若さでこの世を去ってしまった。
過去の出演作を見てみると、特に80〜90年代に出演していたドラマ作品はどれも名作ばかりだ。シリアスな役からコミカルな役までこなせる中山さんだからこその経歴だろう。
しかし、中には動画配信サービスでの配信や再放送が行われず、視聴が困難になってしまった作品もある。その一つが、1996年にフジテレビ系列の「月9枠」で放送された『おいしい関係』だ。今回は、90年代の中山さんの魅力が詰まった名作ドラマ『おいしい関係』を振り返る。
※本記事には作品の内容を含みます
■料理×恋愛!テンポよく進むストーリーが視聴者の心を掴む
『おいしい関係』は、1993年から『ヤングユー』で連載された槇村さとるさんの同名漫画を実写化したドラマだ。
物語の舞台は、東京国立のビストロ「プチ・ラパン」。経営者の父を持つお嬢様・藤原百恵(中山美穂さん)は、日頃から「美味しい料理は心に効く」と言うほど食を愛する父と様々な料理を食べてきた。食べただけで食材を当てられるほど優れた味覚を持つグルメに育った百恵は、あるとき、高級フレンチレストランでシェリー酒を使ったコンソメスープと出会う。彼女にとってこの味は、運命を変えるほど衝撃的なものだった。
そんな矢先に父が病に倒れて命を落とし、人生が一変。会社の負債のために家を差し押さえられ恋人にも振られ、身一つになってしまったのである。葬儀後、百恵は偶然訪れた「プチ・ラパン」であのコンソメスープと再会を果たし、運命の歯車が回りだす。
作っていたのは、パリのフレンチで修行した経験を持つ実力者・織田圭二(唐沢寿明さん)だった。感動した百恵は、料理経験ゼロながらその場で「この店で働かせてください。このコンソメスープの傍で働きたいんです」と頼みこむ。かくして裸一貫で料理の世界に飛び込んだ百恵は、超辛口な織田の悪態にも負けず、食べる人に幸せを与えるシェフを目指して奮闘するのだった。
再放送はほぼなく、配信もされておらず、視聴がかなり難しくなっている『おいしい関係』。今回、DVDで改めてドラマを見返してみたが、全体的に非常にテンポがいい。それが90年代らしいコミカルさにつながっていて、失敗を繰り返しながらその都度前を向いてどんどん成長していく百恵が好感度満点で、視聴者はいつの間にか彼女を応援してしまうのだ。