魔空空間、レーザーブレード、蒸着…今も色あせない「宇宙刑事シリーズ」昭和キッズを魅了した“斬新さ”の画像
CD「宇宙刑事シリーズ ソングコレクション ~FOR NEXT GENERATION~」(日本コロムビア)

 1980年代に登場し、特撮界に新風を吹き込んだ「宇宙刑事シリーズ」が、1985年3月8日の最終回から2025年で40周年を迎えた。ポップアップストアがオープンしたり、上映会イベントが開催されたりと、ファンには嬉しいアニバーサリーイヤーとなっている。

 「宇宙刑事シリーズ」とは、1982年放送の『宇宙刑事ギャバン』を皮切りに、『宇宙刑事シャリバン』(1983年放映)、『宇宙刑事シャイダー』(1984年放映)の3作品を指す。いずれも東映で製作され、テレビ朝日系列で放送された特撮ヒーローの総称であり、別名「宇宙刑事三部作」とも呼ばれている。

 昭和ヒーローのなかでもいろいろと斬新だった宇宙刑事たちは、その後の特撮作品にも大きな影響を与えた。

 子どものころ、父親と行ったラーメン店で“銀色”の缶に入ったコショー「GABAN」を見るたびに、「ギャバンはコショウから(名前が)つけられたんだ!」と勝手に勘違いしていた筆者が、「宇宙刑事シリーズ」の斬新だった部分を振り返ってみたい。

※本記事には各作品の内容を含みます。

■電飾で彩られたメタルスーツとレーザーブレードを装備したスタイリッシュな宇宙刑事たち!

 日本の「特撮ヒーロー」といえば、円谷プロの「ウルトラマン」シリーズや東映の「仮面ライダー」シリーズ、「スーパー戦隊」シリーズなどが有名だ。

 これらは半世紀以上も愛され続ける人気シリーズだが、「仮面ライダー」シリーズが1980年放送の『仮面ライダースーパー1』(1980年から放送)以降、いったん途切れた時期に東映が製作したのが『宇宙刑事ギャバン』である。

 公式によると『ギャバン』から『テツワン探偵ロボタック』(1998年放送)までの17作品を「メタルヒーローシリーズ」と呼び、「宇宙刑事シリーズ」もこのなかに含まれていた。主人公が変身時に“メタリック”な光り輝くスーツで体が覆われることから「メタルヒーロー」と呼ばれる。

 従来のヒーロースーツは伸縮性のある布やウレタン素材などで作られていたが、宇宙刑事の「コンバットスーツ」は強化プラスチックにメッキ加工が施され、ピカピカに磨かれたスーパーカーのような独特のカッコよさがある。さらに電飾で彩られたメカニカルなデザインは、“未来”や“宇宙”を想起し、ワクワクさせられる。

 また昭和の特撮ヒーローの多くが自身の肉体や能力で戦うのに対し、宇宙刑事はスタイリッシュな武器「レーザーブレード」を使用。青白い光を放つレーザーブレードは、メタルスーツにもフィットして子どもたちの心をつかんだ。

 当時『ギャバン』などの現場にもいた特撮監督の尾上克郎さんによると、宇宙刑事が持つレーザーブレードの正体は“蛍光灯”だったという。それも1話に2本しか用意されていないのに割れやすく、下にはドライアイスが置かれていたため、レーザーブレードが割れると“ビリビリした”と明かしていた。

 なお、1987年に公開されて大ヒットしたアメリカ映画『ロボコップ』の主人公のデザインは、『宇宙刑事ギャバン』からの引用である。逆に、その『ロボコップ』からキャラクター表現などの面で影響を受けて作られたのが、メタルヒーローシリーズ第8作目となる『機動刑事ジバン』(1989年放送)だった。

■地球を飛び出して大暴れ! 銀河連邦警察、宇宙戦闘母艦、そして謎のバトルフィールドも斬新!?

 ギャバン、シャリバン、シャイダーの3人は、バード星に本部を置く銀河連邦警察に所属しているために「宇宙刑事」と呼ばれる。

 銀河連邦警察のコム長官や地球人のルポライター・大山小次郎など、シリーズを通して同じキャラクターが登場したことでも、3作品の連続性を視聴者に印象づけた。

 ほかにも、前述したメタルカラーのコンバットスーツやレーザーブレード、主人公と同僚の宇宙刑事たちの拠点となる「超次元戦闘母艦」(『ギャバン』のみ超次元高速機)といった装備面が、シリーズで共通している。同じ世界観で描かれているため、『ギャバン』の後に『シャリバン』『シャイダー』と続いても、視聴者が違和感なく入り込めた点は大きい。

 また、昨今の特撮ヒーローでもおなじみの、敵がピンチに陥ると“巨大化”する展開も、「宇宙刑事シリーズ」では異次元空間としてすでに表現されていた。『ギャバン』に登場する宇宙犯罪組織マクーは「魔空空間」、『シャリバン』の宇宙犯罪組織マドーは「幻夢界」、『シャイダー』の不思議界フーマは「不思議時空」と、それぞれが異空間を発生させる。この異空間の中では敵が大幅に強化され、巨大化や分身を行うなど有利に戦えるフィールドであった。

 こうした設定はメタルヒーローシリーズだと『重甲ビーファイター』(1995年放送)が受け継いだだけなので、「宇宙刑事シリーズ」が生んだ斬新な特徴といえるだろう。

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