
2000年より『Cookie』(集英社)にて連載が開始された、矢沢あい氏の『NANAーナナー』。
“小松奈々”と“大崎ナナ”、同じ名前の2人の女性を主人公にそれぞれの人生を追っていく物語で、等身大で描かれる恋愛や友情に多くのファンは胸を熱くした。現在は長期の休載に入っているが、いまもなお連載の再開を望む声は多く、少女漫画史に残る言わずと知れた名作である。
本作は物語や繊細な絵柄もさることながら、登場するキャラクターたちが魅力的なのもファンを惹きつける理由だ。
そこで今回は、『NANA』のキャラクターのなかでも屈指のイイ男だと呼び声が高い、ヤスこと高木泰士のすばらしさについて語っていきたい。
※本記事には作品の内容を含みます
■その懐の深さは海のごとし!? 周囲の人たちを包み込む包容力
ヤスの魅力のなかでも特筆すべきは「包容力」だろう。彼はバンドのリーダーとしてメンバーをまとめる役割だが、天涯孤独のナナにとっては保護者のような存在でもある。
だが、そんな彼も幼少期から苦労してきた過去を持つ。両親を亡くし、児童養護施設に引き取られたヤス。同じ施設で育った本城蓮(レン)とは、その頃からの付き合いだ。
彼は自分を引き取ってくれた育ての親への恩もあり、当時から優等生で生徒会長を務めるなど、品行方正で“まとめ役”に回ることが多かった。その一方、裏ではタバコを吸ったりバンド界隈に出入りしたりという一面もあり、当時からの知り合いである一ノ瀬巧(タクミ)は、“裏番長”と揶揄していたほどだ。
そんなギャップも魅力のヤスは、どこへ行っても頼られる存在であった。俺様主義のタクミでさえヤスには一目置いており、時に彼を頼ることも。当然、女性からの人気もあり、とにかくモテる。
高校時代は「TRAPNEST」(以下トラネス)のボーカル・芹澤レイラと付き合っていたことも明かされており、自身のバンド「BLACK STONES」(以下ブラスト)のファンクラブを束ねる結城詩音もまた、彼に心酔している様子だ。
また、事務所の寮で一緒になった篠田美雨もヤスに惹かれ、2人は現在恋人同士だ。美雨と付き合ってからは、普段は裏方に回ることが多く自分のことは二の次だったヤスのプライベートな部分も描かれるようになり、ヤスファンの筆者は嬉しかったことを覚えている。
男性に対し消極的な美雨だが、彼女のペースに合わせて交際をしていくヤスのジェントルマンな姿にキュンとしたファンは多いだろう。相手に寄り添う姿勢を崩さないヤスの“イイ男”ぶりは、そんな性格からきているように思う。
■司法試験に合格するほど秀才! 圧倒的な安心感が魅力
物語序盤、ヤスは弁護士事務所に務めていた。大学在学中に司法試験に合格するほどの秀才であったが、司法修習を受けていないゆえ、弁護士ではなく事務として働いていたようだ。そんな彼の秀才ぶりはバンドの運営でも大いに役立っていた。
自身のバンド・ブラストのメジャーデビューが決まり、大人たちに囲まれてほだされてしまいそうな状況のなか、冷静に舵取りができるヤスのおかげで救われた場面は多いだろう。所属する事務所の重役たちもヤスに意見を聞く場面もあり、それだけ信頼が厚いことがうかがえる。
バンドのリーダーとしてこの上ない活躍を見せるヤスは、ブラストだけでなく、タクミ率いるトラネスのトラブル処理に回ることもあったくらいだ。
いつでも冷静で頭のキレるこんな友人が実際にいたら……と、ナナたちが羨ましくなってしまうほどヤスの魅力は多い。