■ナナに深い愛情を注ぎ、幸せを願っていたヤス

 誰に対しても優しく包容力を持つヤスだが、ナナへの愛情はそのなかでも特別なものだった。

 作中、ナナとの再会に尻込みするレンに「もう会う気がねぇんなら ナナはおれがもらう」と焚きつけてみたり、ナナから「あんたあたしにベタ惚れじゃん?」と言われ、「そーだな ここまで手の内 晒しちゃとぼけ様がねえな」と答えてみたりと、ナナへ特別な感情を持っていることは明らかだ。

 その気持ちが恋愛感情だったかは定かではないが、常に彼女の幸せを願っていたことは間違いない。そして、ナナと同じくらい大切な存在であるレンのことも気にかけ、心配していた。

 こうしてナナとレンを守ることに尽力してきたヤスだが、2人には悲しい別れがやってきてしまう。自身も親友を失い失意の底にいるヤスがナナの前で流した涙には、グッとくるものがあった。

 そんな周囲に気を配ってばかりのヤスが、自身の感情をあらわにしたシーンがある。ナナが1人で上京する出発の時、ヤスが「ナナ 行くなよ」「寂しいじゃない」と声をかける場面だ。

 何を言ってもナナが東京に行ってしまうことは分かっていただろうが、それでも言わずにはいられなかった一言。言い方や表情を含め、非常に印象的なシーンである。その後、ナナを心配したヤスは弁護士事務所を辞めて自身も上京、再度ブラストを引っ張っていくこととなる。

 身近な人間をいつでも守り、大切にするヤス。友人としても恋人としても、つくづくヤスは“イイ男”だと思ってしまうのだ。

 

 『NANA』屈指の“イイ男”であるヤス。彼の魅力については語り尽くせないが、こうして行動や言葉を見返してみると、今でも惚れ惚れとしてしまう。

 そんなヤスの活躍が『NANA』でもう一度見られる日を、楽しみにしたい。

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