
尾田栄一郎氏が描く海洋冒険漫画『ONE PIECE(ワンピース)』。同作の世界観において重要なアイテムに位置づけられるのが「悪魔の実」の存在だ。
その実を食べることで、さまざまな特殊能力を得るかわりに、カナヅチになるといったデメリットも生じる。その不思議な実の正体は一体何なのか……。読者のあいだでもさまざまな議論が交わされてきたが、作中にて「世界最大の頭脳を持つ男」とされる「Dr.ベガパンク」が、ある仮説を提唱した。
そのベガパンクの衝撃発言を振り返りながら「悪魔の実」の正体について、あらためて探ってみたい。
※本記事は作品の核心部分の内容を含みます。
■悪魔の実=誰かが望んだ人の進化の可能性
1069話にてベガパンクは、エッグヘッドを訪れた麦わらの一味に対して悪魔の実に関するひとつの仮説を提唱した。それが「“悪魔の実”とは……!! 誰かが望んだ『人の進化』の“可能性”である!!!」という発言だ。
天才科学者であるベガパンクは“無機物”に悪魔の実の能力を与えたり、人工の悪魔の実を作り出したりと、悪魔の実の研究における第一人者ともいうべき人物である。
そんな彼が提唱したのは、悪魔の実は人間の願望を“能力”というかたちで具現化するという説。また、その不自然な現象を起こすことにより、自然の母である「海」に嫌われるため、泳げなくなるというデメリットが生じるのだという。
おそらく読者の皆さんも「自分だったら、どんな悪魔の実の能力が欲しいか」と妄想したことくらいはあると思う。それが『ワンピース』の世界であれば、「悪魔の実」の能力として叶ってしまうことを示しているのだろう。
とはいえ、これはあくまでもベガパンクの立てた仮説にすぎず、真実はいまだに明らかになっていない。
■現実とは異なる特徴を持つ能力も!?
白ひげ海賊団の3番隊隊長のダイヤモンド・ジョズは「キラキラの実」の能力者である。「キラキラの実」は、自らの体の一部をダイヤモンドに変化させられる能力で、世界最強の剣士たるジュラキュール・ミホークの斬撃すら防ぐほどの硬度を持つ。
ダイヤモンドは「世界一硬い物質」として知られているが、実は瞬間的な強い衝撃や一定の方向からの衝撃には弱いという特性がある。そのためハンマーなどで思い切り叩くとあっけなく割れることがあり、本来のイメージとはかけ離れた特性があるのだ。
それにもかかわらず、一部をダイヤモンドに変えたジョズの体は硬度を維持し、その硬さを活かした体当たり攻撃の衝撃でも壊れることはなかった。
これをベガパンクの仮説に当てはめると、「ダイヤモンドは世界一硬い=どんな攻撃も寄せつけない」という人間の思い込みが、そのまま能力に活かされたという考え方もできる。
また、CP9(現在はCP0)の一員であるカクが持つ動物(ゾオン)系悪魔の実「ウシウシの実 モデル“麒麟(ジラフ)”」の能力も良い例だ。
四角く長い鼻が特徴的なカクが人獣型に変身すると、なぜか全身が角張った形状になる。さらに首を引っ込めると手足が伸びるという、自然界のキリンとは全然関係なさそうな特徴も持っていた。
このように実際の物質や動物からは考えられない特徴を示すのも、最初に能力を望んだ者の空想がそのまま能力に活かされたのだとすれば、一応の辻褄は合う。