
3月9日は、「3・9(=ザク)」の語呂合わせから「ザクの日」と呼ばれているのをご存知だろうか。そしてザクと聞いて大半の人が連想するのは、動力パイプが露出し、スパイクつきのショルダーアーマーを持つ「ザクII(MS-06)」かと思われる。
ザクIIは『機動戦士ガンダム』を代表する量産モビルスーツ(MS)の1機ではあるが、そこにたどり着くまでにはさまざまな改良が重ねられてきた。
そのザクIIの前身にあたるのが、MS-05「ザクI」である。ザクIIと区別すべく「旧ザク」などとも呼ばれるザクIは、数少ないながらも映像作品に活躍シーンが存在した。そんなザクのルーツともいえるザクIにスポットを当ててみたい。
※本記事は作品の内容を含みます。
■偉大なる戦果と赤い彗星の輝き
劇場版およびOVAの『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』では、MSー01からMS-06「ザクII」に至るまでの開発経緯が映像化されている。アニメ『機動戦士ガンダム』とはパラレルの世界観ではあるが、設定を踏まえるとこの開発の流れについて大きな違いはないと考えられる。
モビルワーカーと呼ばれる作業機械から始まり、MSー03では「ミノフスキー粒子」の発見者である「トレノフ・Y・ミノフスキー博士」が開発した小型核融合炉を搭載。MSー04にて実戦に耐えうる機体となった。
先行試作機的な意味合いの強かったMSー04をベースに量産可能な生産性を確保すべく開発されたのが、MSー05「ザクI」である。
『ORIGIN』の劇中では、すでにジオン軍内で頭角を現していた「黒い三連星」や「シャア・アズナブル」といったエースたち用にパーソナルカラーに塗られたザクIが配備されていた。
さらに実戦においてザクIは、地球連邦軍の「ガンキャノン初期型」などと交戦。5対12という数的不利をものともせずジオン側の被害はゼロで、ガンキャノンを含む連邦戦力を全滅させている。まさに華々しいザクIのデビューである。
シャアが乗る機体にはさらに改良が施され「MSー05S」へと強化。武装面や肩のシールド、スパイクアーマーなどはザクIIと同じものになる。
『ORIGIN』公式サイトの解説によれば、ザクIの接近戦はショルダータックルが想定されており、その攻撃力アップのために左肩にスパイクアーマーが採用されたという。
そしてシャアは、一年戦争開戦直後の月面都市での戦闘にこのザクIで参戦。戦闘機や戦艦を撃墜する目覚ましい活躍をみせた。しかし戦闘後に背部バーニアに不具合が出た本機について、シャアは「まだまだだ」と評価している。
これは『機動戦士ガンダム公式百科事典』(講談社)でも指摘されているザクIの欠点である、戦闘継続時間の短さとも合致する。こうした欠点の克服を目指し、ザクIIの開発が急ピッチで進められたのである。
■ジオンの老兵がみせた最後の意地
一年戦争時にザクIIが量産されると、ザクIは徐々に一線から退くことになる。だが、テレビアニメ『機動戦士ガンダム』の第3話「敵の補給艦を叩け!」では、補給部隊の作業用MSとしてザクIの姿が描かれた。
補給艦「パプア」の艦長を務めるガデム大尉の乗るザクIは、ホワイトベース隊からの急襲を受け、連邦の最新鋭機であるガンダムと戦うことになる。
ガデムは年老いて後方の補給任務にまわったとはいえ経験豊富なベテランである。補給艦パプアが沈められると、艦外作業をしていたガデムは、武器を持たないザクIでガンダムに挑んだ。
ガンダムのビームサーベルによる突きをみたガデムは「素人め、間合いが遠いわ」と難なく回避。すぐさまザクIのショルダータックルをガンダムの懐に叩き込む。
しかし、旧型のザクIのタックル程度で最新鋭のガンダムにダメージを与えることはできず、ガンダムのビームサーベルに斬り裂かれて爆散した。
もしこのときガデムのザクIが武装していたらガンダムには勝てないまでも、どれだけ善戦できたのか気になるところだ。