■母から娘、妹へと受け継がれていく思い…「笑顔のワンピース」
磯野家を支える優しき母・フネとの繋がりが描かれたエピソードもある。それが「笑顔のワンピース」だ。
自身が着ていた“ひまわり柄のワンピース”を、ワカメにプレゼントするサザエ。はじめこそ喜んでいたワカメだが、友達のワンピースが新品のものであることを知り、おさがりを着ている自分にどこか劣等感を抱いてしまう。
ワカメはワンピースのサイズが合わないと嘘をつき、サイズを直そうとする姉に向かって、「いいわよ! もう着ないから。私には似合わないし」と強情な態度で突き放してしまった。
だが、ワカメはのちに思いがけない事実を知ることとなる。サザエは小さいころ、ひまわり柄のワンピースを大事に着ていたのだが、ワカメが生まれたときに「プレゼントしたい」と、取っておいたというのだ。
姉の真意に驚くワカメ。一方、サザエはワカメが着やすいようにワンピースをセットアップにリメイクしてくれていた。
リメイクされたワンピースを喜んで家族にお披露目するワカメだったが、その姿を見た波平の口から、さらなる事実が明らかになる。実はこのワンピースは、フネが若い頃に着ていたものだった。それをサザエが着られるようにリメイクしたのだという。
母から娘、そして妹へと受け渡されたおさがりのワンピースを、ワカメは「大切に着るからね!」と嬉しそうに受け入れるのだった。
おさがりの服に子どもが抱く等身大の感情、そしてその裏に隠された家族の温かい繋がりを感じる名エピソードである。
磯野家・フグ田家の人々が織りなすドタバタ劇を描いた『サザエさん』だが、ときには大家族だからこその絆や繋がりを描いた、心温まるエピソードが展開される。
キャラクターたちがそれぞれの方法で伝えた家族への想いは、視聴者たちの心をも大きく震わせた。
それぞれの神回から、あらためて『サザエさん』という作品、そしてそこに描かれる大家族の魅力を再認識してしまった次第だ。