■重すぎる愛のために暴走し続ける危険極まりない美少女…『未来日記』我妻由乃
2006年より『月刊少年エース』(角川書店)にて連載された、えすのサカエ氏の『未来日記』は、未来が見える不思議な日記を持った12人が繰り広げるデスゲームをテーマとした、サバイバル・サスペンス作品である。
なかでもその強烈なヤンデレぶりで物語をかき乱したのが、メインヒロインの我妻由乃だ。主人公の天野雪輝に続き、二番目に「未来日記」を手にした美少女で、雪輝と同じ学校に通うクラスメイトでもある。
容姿端麗なことに加えて、勉強、スポーツ共に非常に優秀。人当たりも良く、非の打ちどころのないまさに優等生といった由乃だが、これらはすべて仮の姿。
実は彼女は、雪輝に執着するストーカーだった。自身の“未来日記”の力を活用し、雪輝の行動を逐一把握していたのである。
本来の彼女は雪輝のことのみを優先する極端な人物で、2人の前に立ちはだかる敵に対しては本来の凶暴性をあらわにし、躊躇することなく暴力でねじ伏せようとする。
たとえば、催眠術によって暴徒と化した人々に対しては、相手の作戦を看破したうえで肉厚の斧を振るい、笑顔のまま容赦することなく殺害している。これだけでもなかなかビックリする行動なのだが、雪輝への行き過ぎた愛情表現も恐ろしいほどに一直線だ。
雪輝を監禁するなどは序の口。ときには雪輝の母親が自分たちの仲を認めなかった場合を想定してこっそりと刃物を隠し持つなど、とんでもない行動に出ている。
愛のためにいっさいを顧みず行動するその姿は、まさに非の打ちどころのない「ヤンデレキャラ」といえるだろう。
己の信じる愛のため、常識や倫理すら顧みずに行動していくヤンデレキャラたちは、どの作品でもその突き抜けた言動により、登場人物のみならず読者すらも圧倒する。
作中で彼女らが見せつけるピュアゆえの重すぎる愛情は、ときに物語の新機軸となり読者を魅了してしまうのだ。