■主人公の座、危うし? 男性を凌駕する強さと悲劇

 リアルな戦争を描いた『機動戦士ガンダム』(1979年)より、男性に交じりながら大勢のヒロインが登場するようになる。

 アムロ・レイの幼なじみフラウ・ボウ、ジオンの姫君、セイラ・マス(アルテイシア・ソム・ダイクン)、そしてニュータイプの可能性を信じたララァ・スンが有名だが、ファンによっては「ミライさんだ」「いや、ミハルだろ」「マチルダさんを忘れるな」の声が聞こえそうなほど、魅力的な女性があふれていた。

 続編となる『機動戦士Zガンダム』(1985年)では、カミーユ・ビダンと強化人間フォウ・ムラサメとの悲恋が印象的だったが、大人の女性として魅力的だったエマ・シーンとレコア・ロンドもヒロイン枠から外せない。

 また、同級生で隣人のファ・ユイリィの献身もヒロインそのもの。劇場版『機動戦士Zガンダム A New Translation 星を継ぐ者』(2005年)で、新たな人気を得ることとなった。

 第3作目の『機動戦士ガンダムZZ』(1986年)には、第1作と第2作から数名のキャラクターが引き続き出演し、新規キャラクター登場も伴った結果、ヒロインの数がギャルゲー並みに多くなった印象だ。

 なかでも、10歳と幼いエルピー・プルは無邪気で愛らしく、彼女が辿る運命をことさら悲劇的に感じさせたヒロインだ。一方のルー・ルカは、主人公、ジュドー・アーシタより3歳年上で11センチも背が高い昭和では珍しいヒロインであったが、美しい見た目や性格から女性ファンも多い。

 このように力では劣ることの多い女性でも、強化人間やニュータイプ、モビルスーツへの搭乗などにより、主人公を凌駕するほどのヒロインが『ガンダム』シリーズでは何人も登場していた。

 

 1970〜80年代のヒロインに対して筆者が抱いていたイメージは、主人公のサポート的な存在だった。ところが、今回50作品150人ほどを振り返ってみると、彼女たちがそんな枠に収まらないほどの魅力を持っていると、あらためて気付かされた。

 紹介したほかにも『装甲騎兵ボトムズ』(1983年)には、当初はキリコ・キュービィーより強かったフィアナ、『超獣機神ダンクーガ』(1985年)には、裏切られながらもシャピロ・キーツへの愛が激し過ぎた結城沙羅など、今なお語り継がれるヒロインが大勢いる。

 これから、どんなヒロインが登場し私たちを夢中にさせてくれるのか、楽しみだ。

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