
泣けるアニメとして挙げられる作品の中には、必ずといっていいほど「Key作品」が入ってくる。Keyとは株式会社ビジュアルアーツのゲームブランドで、多くの泣きゲーと呼ばれるものを発売してきた。
そして、2002年に『Kanon』がアニメ化されたのを皮切りに、Keyのゲームを原作とするアニメが次々と放送され、数多くのファンを獲得してきた。
魅力はなんといっても感動シーンで、他のアニメと比べてもそこに重点を置いて制作されているようだ。一見ほのぼの系かと思われる内容でスタートするが、急にリアルな人間模様が展開されていく……。そんな緩急をつけた見せ方がされているからこそ、感動も大きくなるのだ。
そこで今回は、2000年代前半に放送されたKey作品の魅力について紹介していきたい。
※本記事には各作品の核心部分の内容を含みます
■家族の絆に号泣させられた『CLANNAD』
まず紹介したいのが『CLANNAD』だ。本作は1期と2期『CLANNAD~AFTER STORY~』に別れていて、1期は主人公・岡崎朋也とヒロイン・古河渚たちの高校生活を描いたもの、2期は卒業後を中心に描いたストーリーとなる。
特に泣けるシーンが多いのが2期だ。就職後に渚と結婚して、子どもも授かり幸せな生活を送るはずだった朋也。しかし、娘の汐を出産後、もともと体の弱かった渚は命を落としてしまう。
最愛の存在を失った朋也は、渚の母・早苗と父・秋生に汐を任せっきりで仕事に没頭するように……。そんなある日、汐とふたりきりで旅行をすることになってしまうのだった。
当然はじめはぎくしゃくしていた父娘。しかし旅行を通して次第に打ち解け合っていき、汐が初めて朋也に本音で話す場面は涙腺崩壊間違いなしだ。
汐は朋也を困らせないため、どんなに寂しくても悲しくても我慢をしていた。早苗の「泣いていいのはおトイレかパパの胸の中」という言葉をずっと守り続けていたのだ。しかし朋也がようやく歩み寄り始めたために、汐はようやくその胸の中で思いきり泣くことができた。ふたりが本当の家族になれた感動の瞬間である。
だからこそラストの展開はかなり衝撃的だ。朋也と汐がこれから親子の絆を深めていこうとした矢先、汐が原因不明の病に倒れてしまう。朋也にできることは何もなく、衰弱していく姿をただ見守るしかできない……。そんな中、限界を迎えていた汐はお願いとして、“今”パパと旅行に行きたいと言い出す。
朋也はそんな汐の希望を叶えるため、雪が降る中あえて外に出て一緒に歩くも汐は力尽きて動かなくなってしまう。朋也は泣き叫んでいたが、視聴者も同じ気持ちだった。
家族愛がていねいに描かれ、泣きどころが数多くある本作。ファンの間では“『CLANNAD』は人生”と言われることもあるが、それにも納得してしまう。
■登場人物の過去に心揺さぶられる『Angel Beats!』
次は『Angel Beats!』を紹介したい。こちらはKey・アニプレックス・電撃G's magazine・P.A.WORKSの共同プロジェクトで、ゲーム原作ではないオリジナルアニメだ。そのため厳密にはKey作品ではないとするという意見もあるが、原作・脚本やキャラクター原案はKeyが担当。Keyのエッセンスが感じられる作品となっている。
本作は死後の世界を舞台にしており、登場人物たちの人生をめぐる壮大なストーリーとなっている。主人公・音無と仲間たちの成仏が最大の見せ場となっており、それが描かれた最終話に泣きどころが凝縮されているといえるだろう。
これまで生前の記憶を失っていた音無は、自分がどのようにして亡くなったかが分からなかった。そのため、自分がどんな人間だったのか、どんな最期を迎えたのか、と葛藤し続ける。
しかし物語の中盤では、音無がトンネル事故で多くの人間を助けて力尽きたヒーローだったという事実が明かされる。おまけに彼はドナー登録をしており、死後に移植を受けた人まで救っていたのだ。
それを知った音無は、自分の人生に満足すると同時に、理不尽な人生を送った他のメンバーの成仏のため尽力しようと誓う……。そしてついに最終話、仲間たちが思い出話をした後順々に消えていく様子には、涙が止まらない。
登場人物たちの軽妙なやりとりなど、コミカルな要素も多いが、扱うテーマは重めでじわじわ効いてくるような作品だ。次第に明かされていくメンバーそれぞれの辛い過去には心を揺さぶられっぱなしだった。