
1988年にエニックス(現スクウェア・エニックス)からファミリーコンピュータ用ソフトとして発売された『ドラゴンクエストIII そして伝説へ…』。ファミコン時代を代表する人気RPGで、2024年にはHD-2Dグラフィックを採用したリメイク作が発売され、幅広い層のプレイヤーから高い評価を獲得している。
同作は勇敢なる戦士・オルテガの息子である主人公の勇者が、魔王バラモスを倒すために仲間とともに冒険の旅に出るという物語。勇者の旅は各国の王様の耳にも届いており、王様たちはそんな勇者一行にさまざまな協力をしてくれる。今回はそんな王様たちがどんなものをくれたのか? 徹底比較してみよう。
※本記事は作品の内容を含みます
■旅立ちに必要な武器・防具・お金をくれるアリアハンの王様
まずは勇者の住むアリアハンの王様である。アリアハンの王様は「敵は魔王バラモスじゃ」と伝え、冒険の旅に出る勇者に対し、旅に必要なものを与えてくれる。
その中身はというと、こんぼう2本、ひのきのぼう1本、旅人の服1着、そして50ゴールドである。魔王を退治してほしいと願う相手に対し、あまりにも貧弱な装備とわずかなお金しか与えられないのだ。
勇者はすでに自前で銅の剣と皮の鎧というそれなりの装備をしているが、50ゴールドばかりでは仲間の装備を十分にそろえることはできず、皮の盾や皮の帽子すら買えない。「なんて薄情な王様だ」そう思ったプレイヤーもいたかもしれない。
だが、漫画『葬送のフリーレン』(原作:山田鐘人さん、作画:アベツカサさん)でも、魔王を倒した勇者ヒンメルが旅立ちのとき、王様から銅貨10枚しか貰っていないという描写があり、フリーレンが「ケチだよね」とボヤいていた。
これはおそらく『ドラクエ3』のアリアハンの王様を意識して描かれたエピソードだと思われるが、モンスターの脅威に怯えるドラクエ世界では、名の立つ武人もたくさんいるのが当然だろう。王はおそらく、勇者以外にも魔王退治を依頼してきたのかもしれない。そんな武人たちに毎回毎回強力な装備品や大金を与えてしまっては、あっさりやられて無駄になってしまう。中には、勇者だと偽って持ち逃げしてしまうような小悪党も現れるだろう。そのため、最低限度の装備品と金銭しか与えないことにしていたのではないだろうか。
しかも主人公はいくらオルテガの息子とはいえ、まだ16歳の若造。実績があるわけでもない。そう考えると、アリアハンの王様はこのときの勇者に、特に過剰な期待はしていなかったともとれるのである。
■夜中に訪れると意外なものをくれる? イシスの女王
砂漠の国イシスの女王は、その美しさから国民にも非常に人気がある女王だ。バラモスを倒す旅をしている勇者のことも知っているようだった。
イシスといえば、城の西側の地下をもぐっていくことで「ほしふるうでわ」を手に入れることができるが、まほうのかぎの入手後、夜中に城を尋ねるとそのイシスの女王の寝室に忍び込むことができるのである。ふだんは門番以外は侍女と猫と子どもしかいないイシス。侍女が勇者の侵入に叫び声を上げる中、女王は、「人目を忍んでわたしに会いに来てくれたことをうれしく思いますわ」「何もしてあげられませんが贈り物をさしあげましょう」と迎え入れてくれる。そして足元を調べることで「いのりのゆびわ」を手に入れることができるのだ。
しかし、普通であれば夜中に女王の寝室に忍び込むなど、不審者以外の何者でもないし処刑されていてもおかしくはない。にもかかわらず女王のこの神対応。小説『ドラゴンクエスト』では彼女が勇者の父・オルテガに恋をしていたという設定も書かれているため、どこか父の風貌を思わせる勇者をただ突き放すわけにはいかなかったというところだろうか。