■『テニスの王子様』スポーツ漫画の枠を超えた超次元バトル
『ジャンプ』におけるパワーインフレは、バトル漫画に限った話ではない。許斐剛さんのスポーツ漫画『テニスの王子様』も、常識を超越する進化を遂げた。
連載開始当初は、海堂薫の「スネイク」や不二周助の「羆落とし」など、現実でも再現可能な技が主体だった本作。しかし、物語が進むにつれて物理法則を無視した展開へと変貌していくことになる。
菊丸英二が分身し1人でダブルスしているあたりから読者がアレ?と思い始め、主人公・越前リョーマが「無我の境地」を発動、オーラに包まれながら圧倒的な力を発揮したことで決定的となった。この頃から本作は、テニスを超えた異次元スポーツとして愛されるようになる。
新シリーズ『新テニスの王子様』では、その異次元ぶりがさらに加速。相手の五感を奪う幸村精市、ブラックホールを発生させる徳川カズヤなど、もはやスポーツの枠を超え、異能者バトルのような展開となっていくのであった。
『ジャンプ』漫画には、戦いのインフレが止まらず、時には読者が「もうついていけない……」と感じるほどの作品が数多く存在する。
『ドラゴンボール』『キン肉マン』『幽☆遊☆白書』、そして『テニスの王子様』と、どの作品もインフレが進みすぎた結果、当初の常識を大きく超えてしまった。
今後もジャンプ作品のインフレは続くのか、あるいは新たな形のバトル表現が生まれるのか。読者の想像を超える展開が、これからも待ち受けているかもしれない。