■ブラックコメディのなかに張り巡らされたまさかの伏線『さよなら絶望先生』風浦可符香

 2005年より『週刊少年マガジン』(講談社)で連載された、久米田康治氏の『さよなら絶望先生』。

 主人公は、あらゆることをネガティブにとらえる“絶望先生”こと教師・糸色望。本作は担任する2のへ組の個性豊かな生徒たちとともに、パンチの利いたパロディや時事ネタ、社会風刺ネタを披露していくストーリーだ。

 物語終盤、思いもよらぬ設定を披露したのが、冒頭から登場していた超ポジティブ少女・風浦可符香(ふうら・かふか)である。

 望とは対照的に、あらゆることを前向きに捉え行動していく少女なのだが、一方で奇怪な歌を口ずさんだり、異星人と交信を試みたりと奇行も目立つ。

 それまでメインヒロインとして活躍してきた可符香だが、最終話一歩手前の第300話にて、思いがけない衝撃の事実が明らかとなった。

 なんと、可符香は実在しない人物だったのだ。実は、2のへ組の生徒の多くが、とある一人の少女・赤木杏からドナー提供を受けた過去を持っており、それがきっかけで生徒たちに共通の人格として「風浦可符香」が宿ってしまったというのである。

 作中では2のへ組の生徒の誰かしらが可符香を演じ、周りもその人物を可符香として認識していた集団幻覚のような現象だったという。事実、毎回クラスメイトの一人がエピソードに登場していないなど、物語初期からしっかりと巧妙な伏線が張り巡らされていた。

 強烈なブラックコメディのなか、不意に登場したシリアスかつ巧妙な裏設定に唖然としてしまった読者も少なくないだろう。

 

 さまざまな個性で物語に彩りを添えるキャラクターたちだが、物語終盤になってまるで予想だにしなかったとんでもない設定が飛び出し、読者を驚かせることも多い。

 なかにはこれまでのキャラクターの雰囲気のみならず、作品の方向性すらも大きく変えてしまう種明かしもあり、その衝撃の事実にまた引き込まれてしまう。

 ときには、ここまで張り巡らされた伏線回収にもなり得る物語終盤での種明かし。あなたが現在読んでいる漫画にも、もしかしたら用意されているかも?しれない。

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