
物語が進むごとに、登場するキャラクターたちの意外な素性が紐解かれていくのも、漫画作品の醍醐味のひとつだ。なかには物語終盤で、当初は思いもよらなかった設定が明らかになり、読者の意表を突いたキャラクターたちも存在する。
今回は、物語終盤、予想だにしなかった種明かしによって読者を驚かせた漫画キャラクターたちについて見ていこう。
※本記事には作品の核心部分の内容を含みます
■死の間際で覚醒する先祖の遺伝…『幽☆遊☆白書』浦飯幽助
1990年から『週刊少年ジャンプ』(集英社)で連載された冨樫義博氏の『幽☆遊☆白書』は、交通事故で命を落とした中学生が現世とは異なったさまざまな世界を舞台に、霊界探偵として強敵たちとの激闘を乗り越えていく大人気バトル漫画だ。
物語後半、意外な事実が明らかになった人物といえば、やはり主人公・浦飯幽助だろう。
彼に隠された思いがけない設定が明らかになったのが、「魔界の扉編」。作中屈指の強敵・仙水忍との決戦のなかで、彼の先祖に関する意外な事実が判明することとなる。
かつて霊界探偵をしていた仙水と激突する幽助だが、彼の圧倒的実力に苦戦を強いられ、心臓への一撃によって作中2度目の死を迎えてしまう。
主人公の敗北と死……というだけでも衝撃的だが、ここからさらに読者の思いもよらぬ展開が続いていく。
なんとここで、幽助の先祖に、魔界三大妖怪の1人・雷禅がいたことが判明するのだ。彼は「魔族大隔世」によって魔族として覚醒し、まさかの復活を遂げたのである。
魔族として目覚めた幽助は、長い黒髪、全身に現れた刺青のような紋様と、これまでとは異なる禍々しい姿に変貌。無論、その実力も圧倒的で、先程まで苦戦していた仙水を難なく撃破してしまった。
主人公の親族に秘められた事実が明らかになったことはもちろん、覚醒したその新たな力に読者は度肝を抜かれてしまったことだろう。
■世界の真実を知り決断を下した少年…『進撃の巨人』エレン・イェーガー
人間を捕食し蹂躙する不気味な怪物・巨人と、それに抗い生き残ろうとする人々の壮絶な戦いを描いた諫山創氏の大人気漫画『進撃の巨人』。2009年に『別冊少年マガジン』(講談社)で連載が開始され、凄まじい人気から社会現象をも巻き起こした作品である。
本作において、読者も予想だにしなかった設定を見せつけたのが、巨人への激しい憎悪を糧に戦い続ける主人公、エレン・イェーガーだ。
調査兵団の一員であるエレンだが、彼についての思いがけない事実が父、グリシャ・イェーガーの過去編にて明らかとなる。なんと彼は、タイトルにもなっている「進撃の巨人」の能力を、父親からひそかに受け継いでいたというのだ。
能力に目覚めたエレンは、力を継承してきた者の過去の記憶、そして、未来で起こる出来事までを見ることができるようになり、これまで決して知り得なかった太古の歴史や、痛烈な事実を知ることとなってしまう。
これによって、エレンが抱いていた「巨人を駆逐する」という思いは、さらに複雑なものへと変化し、彼は己の理想のため調査兵団の仲間たちからも離れていく。
そして物語の最終局面、世界の真実に触れたエレンは自分たちが生きているパラディ島の外……壁の外側に広がる世界をすべて駆逐すべく、“地鳴らし”と呼ばれる究極の計画を発動してしまうのだ。
人類の希望として戦い続けてきた少年が、物語の後半、世界そのものを破壊しようとする脅威になってしまうとは、読者も予想だにしなかったのではないだろうか。