■パイロットの命を枯らす死の領域「アグリッサ」
続いては『機動戦士ガンダム00』に登場したモビルアーマー(MA)「アグリッサ」について振り返っていこう。
戦争屋を自称し、数多の戦場で猛威を振るうアリー・アル・サーシェスが搭乗したAEUイナクトカスタム。このMSがAEUの大型兵器「アグリッサ」と合体し、MAとして運用されるのである。
イナクトの下半身は、まるでアリの胸部のような形状をした「アグリッサ」に格納されており、そのいびつなデザインが赤いカラーリングと相まって恐怖を掻き立てる。
初登場時は右手に所持したブレイドライフルを発砲しながら、刹那・F・セイエイのガンダムエクシアに急接近して激突。地面に激しく叩きつけられたエクシアに覆い被さるように「アグリッサ」から6本の脚が展開され、そこに強力なプラズマフィールドを発生させた。
電撃のようなこの攻撃をモロに食らった刹那はコックピット内で絶叫しており、それを見ていたサーシェスも「機体だけ残して消えちまいな!」と言っていたことから、パイロットの殺傷および、機体の鹵獲(ろかく)を目的とした攻撃であることが伺える。
しかしその後、ガンダムスローネアインの急襲を受け「アグリッサ」は一撃で大破してしまう。ガンダムエクシアの鹵獲が目的だったとはいえ、的が大きく乱戦での使用にも不向きという、運用の難しい奇抜な武装の一つだと言えるだろう。
■武装としての合理性に富んだタイヤ「アインラッド」
最後に機体固有の武装ではないが、『機動戦士Vガンダム』に登場した「アインラッド」を紹介したい。
「アインラッド」はザンスカール帝国が実行した「地球クリーン作戦」のために開発された、巨大なタイヤ型のサブ・フライト・システムだ。サブ・フライト・システムはMSが搭載することでその機動力や行動範囲を向上させる支援機のようなものだが、「アインラッド」は量産型MSのゲドラフと組み合わせることで、機動力だけでなく攻防どちらの能力も向上させる強力な武装となったのである。
タイヤの内側に乗り込み、まさにドライブするような運用方法が主となる「アインラッド」。巨大さを活かして大地を踏みならす「地球クリーン作戦」の目的に乗っ取っているのはもちろん、MS戦においては高いビーム耐性と、機体を守るビーム・シールドをもって鉄壁の防御を成しているのである。
さらに上部に搭載されたビーム・キャノンとミサイルポッドで走行しながらの攻撃や、ヨーヨーを振り回すかのように使うことで強力な物理攻撃も可能という、非常に合理的な武装の役割も果たしているのだ。
まさかのタイヤが武装に転化し得るとは誰が想像しただろうか。それまでのシリーズを通してもありそうでなかった、奇抜で革新的な発想だと言えるだろう。
サーベルやライフルといったおなじみの武装に留まらず、独特の形状や発想の斜め上を行く奇抜な武装があるからこそ、『ガンダム』作品の戦闘描写は唯一無二の魅力を放つのだろう。
『機動戦士Gundam GQuuuuuuX Beginning』が劇場で絶賛公開中だが、本作で新たに登場する機体たちとその奇抜な武装によって織り成される戦闘描写は、ガンダムファンたちの語らいに新たな花を咲かせてくれそうだ。