意外な過去と共通点…『忍たま乱太郎』きり丸と土井先生の「深イイ関係」と「泣ける神回」の画像
『劇場版 忍たま乱太郎 ドクタケ忍者隊最強の軍師』ⓒ尼子騒兵衛/劇場版忍たま乱太郎製作委員会

 時は戦国時代、忍術学園で忍術を学ぶ生徒たちの日常を描いた『忍たま乱太郎』。1993年にNHK総合テレビで放送が始まるやいなや少年少女からの人気が爆発し、今では老若男女から愛される長寿アニメとなった作品だ。

 アニメシリーズのほか実写化・映画化とさまざま展開される中、2024年12月には、2013年に発表された小説『落第忍者乱太郎 ドクタケ忍者隊 最強の軍師』のアニメ映画が公開され、大好評を博している。

 登場するキャラの中で特に人気が高いのが、映画でもキーマンとなっている土井先生と生徒のきり丸だ。ルックスの良さはもちろんのこと、二人の絆に心を奪われる人が続出し、今では彼らを推すファンも多い。NHKの子ども向けの作品と思いきや、時折挟まれるシビアな設定が判明するエピソードに泣かされることも多い『忍たま』。今回は、そんなきり丸と土井先生の関係性を振り返ろう。

■共通点は悲しい過去にあった

 土井先生は、一年は組の教科担任であり火薬委員会の顧問。25歳の独身で性格は温厚。生徒想いで面倒見が良く、“理想の教師”という声も多い。一方で、高身長イケメンという好条件の彼は多くの少女のハートを撃ち抜いてきた初恋キラーでもある。2011年に番組公式サイトで行われた人気投票「初春の陣」では総合1位に輝くなど、その人気は衰えることを知らない。

 きり丸は、一年は組の生徒で乱太郎、しんべヱとともに物語を盛り上げる主人公の一人で、ポテンシャルはあるものの忍術よりアルバイト命で、超ドケチ。「タダ」という言葉に目がなく、音だけでお金の種類を当てられるスキルの持ち主だ。外見の良さとキャラの立ちっぷりから、彼もまた人気が高い。

 そんな二人には、家族がいないという共通点がある。きり丸は、幼少期に戦で親と家を失い、以来、バイトをしてお金を稼ぎ一人で生きてきた。忍術学園への入学金も、全て小銭で自らが工面したものだった。

 「摂津のきり丸」という名も本名ではなく、名は彼を拾った人が付けたもので、摂津というのは出身地のことである。他の生徒が屋号などを姓とする中、家のない彼だけ特殊なのだ。10歳未満で過酷な目にあいながらも、気丈に生きる姿に胸が痛くなってしまう。

 そして土井先生もまた、ハードな人生を生きている人物である。原作によると、彼の故郷は摂津の国の福原(現在の神戸市)。豪族の若君として生まれるも、幼少期に敵の襲撃で家族を失っていたのだ。

 その後仏門に入って忍を志すが19歳で抜け忍となり、追われる中で崖から転落。ちょうどピクニック中だった山田伝蔵先生一家に命を救われ教師の道を歩みだした。2024年12月に放送されたエピソード「若い人の段」では彼の「半助」という名前も偽名で、山田先生が名付けたものであることが明かされた。このように二人には、天涯孤独という悲しい共通点があったのだ。

■土井先生&きり丸の神回!『土井先生ときり丸の段』

 忍術学園は寮生活だが、長期休暇は親の待つ自宅に帰ることになっている。しかし、きり丸は帰る場所がないため、土井先生が保護者代理として自宅で面倒を見ていた。

 放送開始以来、二人の同居を深堀りするエピソードはほぼなかったが、土井先生の人気投票1位という結果を受けて作られたスペシャル回である19期90話『土井先生ときり丸の段』で、ついに二人の関係に触れる展開が描かれた。

 休暇前、「自分も土井先生と生活してみたい」と盛り上がるは組の生徒達。そこで乱太郎としんべヱは、こっそり彼らの生活を覗くことにした。

 画面は変わり、帰路につく土井先生ときり丸。きり丸から「我が家」という言葉が飛び出すと、土井先生は噛みしめるように「我が家かあ」と呟く。きり丸は無意識だろうが、彼の中で土井先生の家が自分の居場所になっているのだ。そんな二人をお隣のおばちゃんと大家は、「兄弟」や「親子」だと噂していた。確かに、周りから見れば仲睦まじい家族に見えるだろう。

 そこに土井先生が帰宅し、きり丸が元気よく「ただいま~!」と家に入ると、先生は微笑みながら優しい声で「お帰り、きり丸」と答える。このときの先生からは、まるで父が子に向けるような愛が感じられた。

 夕食時、きり丸は「なぜ自分を気にかけてくれるのか」と神妙な面持ちで先生に問う。やはり、彼の中でも気になる点があるのだろう。すると土井先生は、静かに「まあ、同じような育ち方しているからかな」と答える。それ以上深くは語られないが、土井先生がきり丸に自分の過去を重ね、教師と生徒以上の気持ちを持っていることがわかってグッとくるシーンだ。

 ちなみに、は組では皆本金吾も家が遠いという理由で、休暇中は戸部先生宅に居候している。

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