
車田正美氏の『聖闘士星矢』は、ギリシア神話をモチーフにしたバトル漫画である。『週刊少年ジャンプ』(集英社)にて連載が始まったのは1985年。当時はメインキャラの主人公・ペガサス星矢たち青銅聖闘士も人気だったが、12星座をモチーフにした黄金聖闘士に憧れた読者も多かっただろう。
ちなみに筆者の星座は乙女座だ。乙女座と聞くと、優しく美しい女性戦士を想像するかもしれない。しかし黄金聖闘士として登場する乙女座(バルゴ)のシャカはそうではなかった。シャカの攻撃はこれまでにない強さであり、黄金聖闘士のなかでも最強の実力者と言われているのだ。
今回は、そんなシャカの強さをあらためて見返し、深堀りしていきたい。
※本記事には作品の内容を含みます
■強敵のフラグ…登場時の美しくも不穏なインパクトがすごい
シャカの初登場は「デスクィーン島の追憶の巻」にて、フェニックス一輝が暗黒聖闘士のジャンゴを倒したときである。美しい反面不穏な空気を漂わせており、強いインパクトがあった。
「鳳凰幻魔拳」で圧勝し、“もはや地上に敵はいないのだ!!”と喜ぶ一輝。しかしその直後、見たことも感じたこともない圧倒的な光と小宇宙(コスモ)を感じ、衝撃を受ける。そこに登場した人物こそ、目をつむり、神々しい姿で登場したシャカであった。
一輝を見て、“仏陀の手のひらの猿だ”と揶揄し、笑ったシャカ。それに怒った一輝は得意技である「鳳翼天翔」をしかけるも、シャカには全く通じない。それどころかシャカが放ったたった一声の「オーム」によって、一輝の聖衣は砕け散り地に伏してしまった。
一輝は自らの無力さを痛感し、死を覚悟する。だが、その目に一点のくもりもないことが分かったシャカは一輝を殺さずに記憶を消し、その場を去るのであった。
青銅聖闘士の中でも最強のインパクトを残した一輝に対し、オームの技で圧倒したシャカ。しかもとどめを刺さず記憶を消して立ち去る姿に「彼は何者だ!?」とざわついた読者は多いだろう。
■力技ではない! 目を閉じたまま、たった10ページで主要キャラ3人を瞬殺
シャカは青銅聖闘士たちを圧倒し、主要キャラ3人をたった1人で倒している。そのシーンが登場するのは「黄金聖闘士編」で星矢たちがシャカと対戦する場面だ。
城戸沙織を救うため、十二の宮殿を突破すべく進む星矢たち。しかし処女宮に登場したのが“もっとも神にちかい男”と呼ばれるシャカである。
シャカは襲い掛かる星矢、「廬山昇龍覇」を打つドラゴン紫龍、「星雲鎖」を放つアンドロメダ瞬を簡単にかわし、「天魔降伏」の攻撃で3人を瞬殺。この間わずか10ページの出来事である。
それまで戦士たちが繰り出す技といえば、星矢の「ペガサス流星拳」や牡牛座(タウラス)のアルデバランの「グレートホーン」のような力業が多かった。
しかしシャカは手の中にコスモを具現化し、その力で相手を心身ともに完全に破壊するという、まさに神技を繰り出したのだ。こんな技ができる聖闘士なんて、手の打ちようがないのである。