■六道輪廻や天舞宝輪…心が破壊される絶対に受けたくない技の数々
「黄金聖闘士編」でシャカに最終的に挑んだのは、青銅聖闘士の中でも絶対的エースの一輝である。
シャカ同様、精神にダメージを与える技を持つ一輝だが、この戦いでシャカが繰り出した技は圧倒的だった。
「六道輪廻」は、相手を6つの世界(地獄界、餓鬼界、畜生界、修羅界、人界、天界)のどれかに落とす技であり、一輝はまるで奈落の底へと突き落とされたかのような絶望を味わう。ちなみに原作漫画では、それぞれの世界についての詳細が述べられていたが、この技によって仏教における輪廻転生を学んだ子どもも少なくなかっただろう。
さらにその次に繰り出した「天舞宝輪」も、相手の五感を1つずつ奪うという恐ろしい技であり、精神的なダメージは計り知れなかった。
こうした技を受けても一輝がなんとか立ち上がれたのは、デスクィーン島で積み重ねた壮絶な経験があったからだ。シャカの技を普通の人間が受けたならば、その精神は完全に破壊され、二度と立ち上がることはできないだろう。
■目を開けたシーンで読者は絶望…しかし当時はマネをした子どもも多かった
星矢たちはシャカと対戦する前に獅子座(レオ)のアイオリアより「絶対にシャカの目をひらかせるな!」と言われてきた。彼の目が開く時こそ、その場にいるすべてのものは息絶えると言われていたのだ。
しかし一輝とのバトルにおいて、ついにシャカの目が開く時が来る。目を見開いて繰り出した技こそが、上記の「天舞宝輪」だ。そしてシャカは一輝の触覚、嗅覚、味覚、視覚、聴覚、さらに第六感までも順番に奪っていく。その荘厳かつ不気味な技に絶望した読者は多かっただろう。
ちなみに筆者が小学生のころ、休み時間に何人かの男子が目をつむり、手を合わせた状態で「オーム」と言っていた時期があった。『聖闘士星矢』を知らない女子は“なんのこっちゃ”と思っていただろうが、本作のファンであった筆者は“いいなあ、私もマネしたい……”と、ひっそり思った記憶がある。
シャカは「黄金聖闘士編」では敵であったが、子どもたちが憧れるほどの揺るぎない強さを持っていたのだ。
『聖闘士星矢』に黄金聖闘士が登場したころ、クラスの友達同士で自分の星座がどのキャラなのかと盛り上がったものだ。
乙女座の筆者がシャカだと言ったところ、周りからうらやましがられた記憶がある。星座ランキングにおいても最上位の地位を作ってくれた黄金聖闘士のシャカ、その存在は時を超えて今なお憧れの的であり、語り継がれているのだ。