■庭付きの家に憧れる『クレヨンしんちゃん』野原家

 続いては『クレヨンしんちゃん』の野原家を見ていきたい。ひろし、みさえ、しんのすけ、ひまわり、シロの野原家もまた、知名度が高い国民的家族の一つだ。

 アニメ「若い二人はこうして家を買ったゾ」の回では、ひろしが32歳のときに35年ローンを組み、埼玉県春日部市にある建売住宅を購入するまでの過程が描かれた。いきつけのスーパーが「サトーココノカドー」で、同店のモデルが先日閉店したイトーヨーカドー春日部店ということから、駅からもほど近いと推測されるだろう。

 間取りは庭とカーポート付きの木造二階建て4DK(または3LDK)で、1階に和室とダイニングキッチンと居間、2階にひろしの書斎と、みさえの妹・むさえがかつて居候していた洋室の2部屋。ただ、一家は1階の和室で寝ているため生活のほぼ全てが1階で完結している。

 ひろしが一世一代の覚悟で購入したこの家には、大きな愛が詰まっているが、そんな野原家が購入からわずか数年で全壊してしまうという衝撃エピソードがある。アニメでは「突然家が大変だゾ」で描かれたこの回。原因は、コンロのガス漏れに気が付いたみさえが「いけない! 火!」と言った瞬間にしんのすけが「ほい、火」とチャッカマンを付けたことによるガス爆発だ。

 ローンを残して家を失った野原家は一時近所のアパート「またずれ荘」に引っ越すことに。その後、保険で費用を賄い、外見も中身も全く同じ家を建てている。アパートに住む夫婦が赤ちゃんだったしんのすけを抱え家を買い、紆余曲折ありながらも家族仲良く暮らしていく。意外な一家の歴史もまた、感動を支えているポイントのひとつかもしれない。

 昭和から続くアニメ作品に登場する家の間取りは、現代の一般的な家の間取りと比べて使い勝手が悪そうに見えるものもあるだろう。だが、そのちょっとした不便さや独特な構造こそが、古き良き昭和の暮らしそのものなのかもしれない。

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