■戦場で武器と盾を手放す大胆な動き
最後に紹介するのは『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』で、クェス・パラヤとギュネイ・ガスの2人を相手にしていた戦闘シーンから。
ニュータイプのクェスはモビルアーマーのα・アジールに乗り、強化人間のギュネイはヤクト・ドーガに乗っていた。この2人を同時に相手にしながらも、どこか余裕を感じさせる立ち回りを見せていた時点で驚くべきことだ。
だが、クェスを守ろうと奮闘するギュネイの気迫も大したもので、ヤクト・ドーガの攻撃によってνガンダムの盾は半壊する。しかしその直後、アムロはおもむろに盾とバズーカを手放した。
突然の予想もしない動きに一瞬気を取られたギュネイ。その隙をアムロは見逃さず、ビームライフルでギュネイのヤクト・ドーガを狙撃して撃破した。そして、何事もなかったかのようにバズーカを回収すると、その場を離れていったのである。
この場面で、筆者が驚いたのは2つ。まずは激戦のさなかに盾とバズーカを手放したシーン。機体の高性能化が進み、一撃の威力が高くなったモビルスーツ戦において、数少ない装備を手放すのは考えられない。
ニュー・ハイパー・バズーカを手放せば攻撃手段がひとつ減り、盾を手放せば防御手段が減る。だからこそギュネイもそのワナに引っかかったのだろうが、並みのパイロットにはできない芸当に思えた。
そしてもう1点は、ギュネイを倒したあと、当たり前のようにバズーカ「のみ」を回収して去っていった点だ。あの一瞬のやり取りで「バズーカはまだ使えるから回収、盾はもう使えないから放棄」と判断したのだ。的確な状況判断を瞬時に下せるアムロの明晰な頭脳こそ、真の強さの秘訣かもしれない。
アムロといえば、ケタ外れのニュータイプ能力が取りざたされがちだが、それ以上にパイロットとしての冷静な判断力や自由な発想に驚かされる。熟練のパイロットであるほど、こうしたアムロのトリッキーな動きに惑わされるのではないだろうか。