理不尽すぎて迷宮入り…でも実は悲しい事件?ファミコン伝説の迷作『ミシシッピー殺人事件』の「真相」に迫る!の画像
ファミコン『ミシシッピー殺人事件』 (C)1986 JARECO (C)1986 ACTIVISION. INC CODE FOR NINTENDO FAMILY COMPUTER

 『ドラゴンクエスト』でロールプレイングゲーム(RPG)が人気を獲得するまで、ファミコンといえばアクションゲームとシューティングゲームが中心だった。そして、その2大ジャンルに割って入り、渋い楽しさを子どもたちに与えてくれたのが「アドベンチャーゲーム」だった。

 アドベンチャーゲームとは、プレイヤーが「いどうする」や「さがす」「はなす」といったコマンドを駆使しながら様々な場所を移動し、クリアを目指すというジャンルのゲーム。殺人事件を扱うものが多く、パッケージもハードボイルドテイストのものが多かったが、大人の世界を覗き見できるようで、興味をそそられた子どもは多かったのではないだろうか。

 近年でもシステムがさらに進化し、根強い人気を誇るアドベンチャーゲーム。ファミコン時代には『ポートピア連続殺人事件』(1985年、エニックス)のヒットを皮切りに、『さんまの名探偵』(1987年、ナムコ)や『ファミコン探偵倶楽部 消えた後継者』(1988年、任天堂)など名作が生まれている。

 そんな中で、いろいろな意味で伝説を残しているのが、1986年にジャレコから発売された『ミシシッピー殺人事件』である。その理不尽ともいえる内容で、様々なアドベンチャーゲームを経験していた当時のプレイヤーでも多くが迷宮入りしたに違いない。

 筆者は友人から「もうやらなくなったからあげる」と、複数のファミコンソフトをもらったことがあり、その数本の中に入っていたのがこの『ミシシッピー殺人事件』だった。当時のファミコンは1本1本が貴重で、どれだけ内容がムズかしくてもなんとかがんばってプレイしたものだが、同作のクリアまで辿り着いた人はどれぐらいいただろうか。

 今回はそんな『ミシシッピー殺人事件』の理不尽さを振り返るとともに、当時解決できなかった事件の真相に迫りたい。

※本記事は作品の核心部分の内容を含みます

 

■船内に仕掛けられたトラップの数々

 『ミシシッピー殺人事件』はアメリカ・アクティビジョン社により発売されたPC向けソフトで、1986年にファミコンに移植。アメリカのミシシッピー川で運行する客船デルタ・プリンセス号に乗っていた探偵チャールズとその助手ワトソンが船内で起こった殺人事件を解決していくというストーリーだ。

 ゲームはチャールズとワトソンの客室からスタートする。チャールズは、気分がいいから船内を散歩でもしようと歩き回ることになるのだが、隣の部屋に入り奥に進もうとすると、いきなり床に穴が空き、チャールズは転落。ワトソンは「せ、先生!」と叫び、この高さから落ちたら助からないと口にし、ゲームオーバーとなってしまう。

 気を取り直して最初からやり直し、落とし穴のある部屋を避け、他の部屋を探索していると、今度はナイフが飛んできて、チャールズの額を直撃。ワトソンはまたしても「先生!」と叫び、チャールズは死んでしまう。

 しかもこのナイフは見事にチャールズの額を直撃するような高さに飛んでくるため、ワトソンを盾にしようにも、背の低いワトソンの頭の上をすり抜けてチャールズの頭を直撃するのだ。何度やってもダメである。なんと危険な客船なのだろうか。

 こうやって理不尽に死にまくってしまうのが『ミシシッピー殺人事件』というゲームなのだ。それでも辛抱強く推理を進めるプレイヤーもいただろう。だが、さらにシステム上でも罠が待ち構えている。

 このゲームは、乗客から話を聞き、それをメモして、メモした内容を他の乗客に尋ねるという形で進めていく。だが、このメモをしそこなってしまうと、もう一度尋ねても「もういいました」と教えてくれない。これで実質ゲームクリアは不可能になって詰んでしまうのだ。

 このように、理不尽なまでのゲームオーバーで、現代でも語り継がれている『ミシシッピー殺人事件』。だが、当時はコントローラーを投げたくなるような死に方でも、これが今のような親切なゲームにはないファミコン時代ならではの面白さでもあった。

 たとえば、チャールズが落とし穴に落ちていく場面は、何の音もすることなくいきなり床に空いた四角い穴にスーっと吸い込まれるように消えていく。その光景がシュールすぎて逆に何度も落としたくなってしまうぐらいだ。そうしたプレイした人にしか分からないツボが同作にも散りばめられているのだ。

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