■彼女の死によって始まるハードな展開の数々…『パートナー』桜沢萌
1999年から『りぼん』(集英社)で連載された小花美穂氏の『パートナー』は、双生児として生まれた少年、少女たちを主軸に、彼女らが巻き込まれていく“とある陰謀”を描いた、サスペンス色の強い作品だ。
物語冒頭では主人公である高校生・桜沢苗を中心とした学園生活や恋愛模様などほんわかとした日常が描かれているのだが、彼女の双子の妹・桜沢萌の唐突な交通事故死によって物語は急展開を迎えることとなる。
主人公の双子の妹の死……これだけでも十分衝撃的なのだが、なんと萌の遺体は製薬会社によって病院から盗み出され、実験的に「L・S・P」と呼ばれる生きた人間剥製に作り変えられてしまうのだ。
しかし、これはまだまだ序の口。ここからさらなるハードな展開の数々が、怒涛の勢いで繰り広げられていく。
シリアスな描写も多い本作においてとくに悲惨だったのが、萌の彼氏であった添田賢の末路だ。
もともと萌が死亡したことで心身共に弱っていた賢だが、製薬会社に監禁されているあいだに人間剥製となった萌を目の当たりにし、さらに精神をすり減らしていく。そして彼は最終的に博士の口車に乗せられ自ら命を絶ってしまう……。その後、萌と同じ「L・S・P」に作り替えられてしまう。
全体を通して生と死という重々しいテーマが描かれている本作。次々に襲い掛かる容赦ない展開に心をすり減らしてしまった読者も少なくないだろう。最後に訪れる切なくも感動的な結末を、ぜひその目でご覧いただきたい。
さまざまな世界観で主人公たちの恋愛や成長劇が描かれる少女漫画だが、そのなかで唐突に訪れる登場人物たちの死は、作中のキャラクターのみならず、読者の心をも揺さぶるものだ。
とくにメインキャラと深い関係性にあった人物の死は、物語にも急激な変化をもたらす。彼らの突然の死による喪失感とともに、急展開を迎える物語。衝撃を受けつつも、さらに作品に引き込まれる読者も多いだろう。