「渡部篤郎の色気がヤバイ…」名作ドラマ『ケイゾク』、なぜ「真山徹」という男は女性の心をつかむのかの画像
渡部篤郎  写真/ふたまん+編集部

 1999年にTBS系で放送され、それまでにない斬新な映像や演出、世界観が話題を呼んだ堤幸彦監督によるドラマ『ケイゾク』。本作には主人公の柴田純をはじめ、個性豊かな登場人物が数多く登場するが、やはり柴田のバディであり、もうひとりの主人公ともいえる真山徹の存在はあまりにも大きい。

 真山は初登場時からぶっきらぼうで口が悪く、いかにもやる気がなさそうな態度をとりがちだった。かと思えば裏では怪しげな行動をとっており、“危険な男”のイメージも強い。しかし、一見そうした闇の要素が色濃いからこそ、ストーリーが進むごとに垣間見える優しさや愛情深さといった“素”の部分も引き立つ。女性の視聴者なら、多くの人が彼のトリコになってしまったことだろう。

 今回はそんな“ギャップの塊”、真山徹の魅力について改めて振り返っていこう。

※本記事にはドラマ『ケイゾク』の核心部分の内容を含みます

■いかにもワケあり…闇を感じさせる“危うさ”

 柴田が配属されることになった警視庁捜査一課弐係は、迷宮入り事件を扱う部署……というのは建前で、そのおもな存在意義は未解決事件の被害者家族の対応をし、“まだ未解決だなんて警察はいったい何をやっているんだ”という不満をなだめることにある。つまり、ハナから事件解決など期待されていない、日陰の部署なのである。

 そんな部署に所属しているのは、事情があって第一線で活躍できなくなったり、飛ばされてしまったりと、何かとワケありな者たちばかり。真山もそのうちのひとりで、新人として現れた柴田にもまるで興味を示さず、何に対してもどうでもいいと思っていそうな、気だるげな雰囲気が印象的だった。

 飄々とした態度を崩さず、最低限の仕事を黙々とこなし、終業時間になればすぐに姿を消す真山。一方で彼は、仕事から解放されると「朝倉」という青年の監視に精を出すという、怪しげな一面も持っている。

 対象をつけ回したりアパートから望遠鏡でずっと覗き見したりと、犯罪まがいの行動をとる執着ぶりは異常だ。その理由は、かつて朝倉が最愛の妹を死に追いやったからなのだが、なにも知らない状態だと恐怖でしかない。

 さらに、ちょっとしたきっかけで過去がフラッシュバックすると、突然キレて暴力的な一面を見せるのもけっこう怖い。不安を煽る演出や渡部篤郎さんの巧みな演技も相まって、いつ豹変するかわからない真山の“危うさ”にはゾクゾクさせられっぱなしだった。

■本来の姿とのギャップにキュン…

 そんな真山だが、なりゆきで柴田のお世話係的な立場になると、彼女のペースに巻き込まれるうち少しずつ心を開いていく。そもそも、嫌そうにしつつなんだかんだ付き合ってあげるあたり、当初から真山の面倒見の良さはなんとなく匂わされていた。

 もちろん、柴田がどれだけぞんざいに扱われようと気にせずグイグイ行く、超マイペースな性格であるのも大きい。おまけに超ドジで方向音痴で常識外れ……いろいろな意味で放っておけないタイプである。そんな彼女だからこそ真山もつい手を貸してしまい、とっくに捨てたはずの「本来の自分」を思い出していったのではないだろうか。

 まっすぐで純粋な柴田とひねくれ者で陰のある真山は好対照で、だからこそ意外と噛み合う不思議なコンビだ。とくに過去の事件で心に深い傷を負った真山にとって、無邪気な柴田は光のような存在だっただろう。のちに柴田に対し「(妹は)生きてればね、お前と同い年だ」と語っているとおり、もしかしたらふたりを重ねて見ていたのかもしれない。

 天然の気があり無意識にボケた行動をとってしまう柴田と、それに対し容赦なくツッコむ真山のやり取りは、回を増すごとに夫婦漫才のようになっていく。事件の関係者に「仲がおよろしくて」とニコニコされてしまい、真山が反応に困る場面も印象的だった。

 さんざん闇深い表情を見せられてきたからこそ、柴田相手に見せるくだけた態度や意外と子どもっぽい言動など、彼の素顔が引き立つ。その激しすぎるギャップにキュンとさせられた視聴者は多いだろう。

  1. 1
  2. 2