■時おり見せるシリアスな表情も魅力的
すでに紹介してきたとおり、真山は基本的に気だるげでのらりくらりとしている。しかしその裏には激情を潜ませていて、シリアスパートではその片鱗を見せる場面も多い。
とくに犯罪者に対する憎しみは人一倍強く、殺人を犯した者に対し、痛烈な言葉を浴びせることもしばしば。とくに第3話「盗聴された殺人」にて、夫を殺した相手に復讐を果たした犯人に、「(お前の息子に)報告してやれよ。パパを殺した犯人をママが殺しましたと、立派なことをやりましたと」と吐き捨てるシーンは強烈だ。自身も妹を奪われ復讐を望んでいるはずの真山は、いったいどんな気持ちでこのセリフを口にしたのだろうか。
また、第6話「史上最悪の爆弾魔」では、一向に犯人がわからないことに歯がゆさを感じ、柴田に対し「柴田ぁ! なんか分かんないのかよお前、お前頭いいんだろ」「嫌なんだよこういうの!」と泣きそうな表情で喚く場面もあった。このときの真山はまるで迷子になった子どものようで、思わず胸が締め付けられた。
そしてドラマの後半、朝倉との戦いが激化していくと、真山のシリアスな表情はますます増えていく。追い詰められボロボロになっていく姿、そんな彼をひとりではいさせまいとする柴田とのドラマも必見だ。
ここぞという場面で真山が柴田に言う「頭の悪い……女だねえ。お前には……生きててほしいんだよ」というセリフには、これまでふたりが築いてきた関係性を知っているからこそ、心が揺さぶられてしまう。そこから美しいラストへとつながる怒涛の展開は、まさに圧巻の一言であった。
ひねくれものでぶっきらぼう、かと思えば面倒見が良くアツい一面もある……そんなギャップの塊のような男・真山徹。
彼を演じた渡部さんの演技が素晴らしく、その虜になってしまった視聴者は多いだろう。ドラマ『ケイゾク』は2025年5月5日からBS-TBSにて再放送が開始される。何度見ても惚れ惚れする彼の姿を、ぜひあらためて本編を観て味わっていただきたいところだ。