■マキャベリズムに徹しないといけない場面も…
敵も意外と賢い。自走砲や戦艦の射程内に入ってこず、戦線が膠着状態になってしまうこともある。
そういった場合の戦術として、歩兵をおとりにして敵の主力を誘い出すという手法をよくやっていた。歩兵は都市を占領するためには必要な部隊であり、安く生産できるが、戦闘能力は低い。戦車Aなどに攻撃されようものならほぼ全滅に追い込まれるぐらいだ。
とりあえず使わない歩兵部隊をおとりにして敵を誘い出し、敵が出てきたところを自走砲で遠距離攻撃するといった形で膠着状態を打破するのである。
改めて振り返ると、おとりになって犠牲となる歩兵たちのなんと切ないことか……。
イタリアの思想家マキャヴェリは、著書『君主論』の中で、「君主にはライオンのような勇猛さとキツネのような狡猾さが必要である」と説いている。小学生の頃は考えもしなかったが、上に立つ者は、多数の利益のためにやむをえず少数の犠牲を選ばなければならないこともある……ということかもしれない。
そうして15のマップを攻略すると、最終マップである敵軍の本拠地マップがお目見えとなる。レッドスター軍は「デビラートウ」、ブルームーン軍は「ラストドリーム」という敵本拠地を攻撃することになるが、さすがに敵本拠地であり、最初から強力な部隊が配置されており、圧倒的に不利な状況からスタートする。
だが、君主となるべきプレイヤーはここまで培ってきた経験を生かしてクリアに導いたことだろう。
以上『ファミコンウォーズ』を振り返ってきた。ポップな絵柄が使用されているが、CMで使われていた「こいつはどえらいシミュレーション」という言葉に嘘はない、硬派な内容のゲームだった。『ファミコンウォーズ』はゲームのため、囲碁や将棋の延長線上のように楽しむだけでいいが、戦争は本当にゲームの中だけの話にしてほしいものである。