■カイの性格が機体の特長とマッチした?
アムロの強さは、ガンダムの性能と彼自身が持ちうる卓越したニュータイプ能力によるところが大きいと思われる。しかし、カイの場合はどうだろうか。
アムロという一番手の切り込み役がいて、カイの役割はガンタンクやガンキャノンでそれを援護する立ち位置だ。とはいえアムロほどではないが、戦死の可能性は十分ありうる。そんな危険な戦場にいながら、彼は最後まで大きなケガをすることなく、きっちりと生き延びた。
戦死したリュウ、大ケガを負ったハヤトの例をあげるまでもなく、ホワイトベース隊は過酷な戦い続きだったにもかかわらずだ。
結局、最終決戦となったア・バオア・クー攻略戦まで無事生還を果たしたのは、彼の冷静さと優れた判断力による部分と、ガンキャノンという愛機が持つ特性との相性の良さがあったように思える。加えて、意外なほどにクレバーな立ち回りをしていた。
ズケズケ物をいうタイプながら繊細な面があり、序盤のカイは臆病な面をあらわにしていた。しかし、彼本来の臆病さは慎重な動きにつながり、経験を積むことでクレバーさが輝くことになる。
お調子者に見えて慎重。終盤になるにつれてアムロを特別意識することもなくなり、ムチャもしなくなる。個人的にカイの強さの真髄は、見た目以上に蓄積した経験が本来の臆病な性格とうまく作用し、結果的に生存力を高めた点にあると考える。
なお、小説版『機動戦士ガンダム』のカイは、アムロと同じようにニュータイプに覚醒。ハヤトやアムロまでもが戦死するなかで、しぶとく生き残っていたのが印象的だ。つまり小説の作者であり、アニメの監督を務めた富野由悠季氏は、やはりカイにそういうイメージを抱いていたということだろう。
一年戦争後のカイはジャーナリストとして名を馳せることになるが、もしもモビルスーツのパイロットとして戦い続けたとしたら、どのような活躍をみせてくれたのだろうか。