テレビアニメ『機動戦士ガンダム』の主人公アムロ・レイは、作中で強烈な存在感を示したキャラクターだ。ガンダムを駆り、歴戦のツワモノたちを撃破しながらニュータイプとして覚醒していき、母艦であるホワイトベースを見事に守り抜いていた。
そのアムロの陰に隠れて、実はホワイトベース隊のなかで見逃せない戦果を挙げていた者がいる。それが「カイ・シデン」で、一時はセイラ・マスから「軟弱者」などと呼ばれた男だ。
そんなカイが秘めていたパイロットとしての実力や才能について振り返っていこう。
※本記事には作品の内容を含みます。
■十分バケモノに育ったガンキャノン乗り
物語序盤は、アムロ、リュウに次ぐ三番手のパイロットとして描写されることが多かったカイ。主役機であるガンダムに乗るアムロや、ホワイトベース隊の中で比較的経験豊富なリュウと比べると、カイの存在が目立たないのも当然といえるだろう。
しかし、いくら重機操縦の経験があったとはいえ、ぶっつけ本番でカイがモビルスーツを操縦できたのは、持ち前のセンスがなせる業としかいいようがない。
しかもアニメを通してカイの戦闘シーンを振り返ると、被弾する場面が少ないことが分かる。それにもかかわらず、要所で相当な数の敵機をきっちり撃墜しているのだ。
一年戦争時の戦績だけみても、カイは立派なエースパイロット並みなのだが、イマイチそのイメージがないのは、近くにアムロという本物の怪物がいたからに他ならない。
また、ガンキャノンに乗るカイは戦場において支援の役回りを担うことが多く、裏方のイメージもある。アムロほど派手な活躍シーンは少ないにせよ、戦場での貢献は見事なものであり、普通に考えたら十分彼もバケモノ級の存在に思える。
■過酷な戦場を生き抜いた生存能力
短いスパンで戦闘を繰り返すことになったホワイトベース隊において、カイはほとんどの戦闘に参加している。つねに最前線に置かれたホワイトベースで味わった濃密な戦闘経験は、何より彼自身を成長させたことだろう。もしかすると彼が一年戦争で積み重ねた搭乗経験は、連邦内のベテランパイロットすら上回るかもしれない。
しかも最初の頃は嫌々戦う面があり、どこか逃げ腰だったカイ。だが恋心を抱いていた少女「ミハル・ラトキエ」の死を経てから精神面も大きく成長する。かつての甘さはすっかり消え、ジオンを徹底的に叩くという強い意志が芽生えた。
以降のカイの戦いぶりは熟練パイロットに匹敵するほどで、特別な力を持つニュータイプ以外なら単独で対処できるほど安定した実力をみせていく。
ホワイトベースは常時狙われる厳しい状況だったこともあり、どんどん戦闘経験を積み重ね、必然的にカイも成長を遂げて頼もしさが増していった。
多くの正規パイロットが命を落とした過酷な戦争を戦い抜き、ホワイトベース隊の要として戦場に立ちながら生きながらえたカイの生存能力の高さは素晴らしいのひと言だ。