■横暴な主人公を唯一抑えられる明るく前向きな『BASTARD!!』ティア・ノート・ヨーコ

 萩原一至氏の『BASTARD!! ー暗黒の破壊神ー』のヒロインは、明るく前向きなティア・ノート・ヨーコだ。

 魔法と剣が織りなす中世ファンタジーな世界観で紡がれた本作。最初は守られるだけの存在だったヨーコだが、成長したのちに大神官である父、ジオ・ノート・ソードと同じように魔法を扱う高僧として活躍していく。

 一方、主人公で伝説の魔導士でもあるダーク・シュナイダー(以下D・S)はとんでもない横暴な悪人だ。残忍かつエロいという、ジャンプ漫画には珍しいタイプの主人公だった。

 かつての戦争で世界征服を目論んだD・Sはジオたちとの戦いに敗れ、戦争孤児であるルーシェ・レンレンの体内に封印される。このルーシェと姉弟のように育ち、面倒を見てきたのがヨーコだ。彼女は深い愛情からルーシェを優しく厳しく育ててきた。

 作中ではD・Sの力が必要になると封印を解かなければならないのだが、そのカギとなるのが“処女の接吻”(つまりヨーコの接吻)というなんとも厄介な設定だ。ルーシェを弟として育ててきたヨーコにとっては気の毒な話である。

 封印を解いてからも大変だ。気に入らないヤツがいると戦い、残忍な方法でやっつけていくD・S。しかもセクハラ全開なのでどうしようもない。

 そんな主人公を唯一抑えられるのがヨーコだった。ルーシェへの“しつけ”はD・Sにも反映されており、お仕置きとばかりに“げんこつ”を飛ばすと、涙目になって「ごめんなさい」と謝るほどに効く。

 とはいえ、大事に育ててきた少年が横暴な魔法使いだったうえ、育った王国も崩壊し、暗黒の破壊神によって人類は蹂躙……。さらに神の軍団によって仲間が次々と倒れていく展開を目の当たりにするなど、実はかなり壮絶な人生を歩んでいるヨーコ。

 だが、自分が許せないと思うことには真っ向から立ち向かい、作中では守られる美少女からチームリーダーとして戦う美女へと変貌していく様子もカッコ良かった。D・S含め、彼女に夢中になった読者は数知れない。

 

 今回紹介してきた3名の美女は、みんな優しくて芯が強いタイプだ。薄幸系で、守りたくなる雰囲気をまとっている彼女たちだが、ハッキリと自分の主張を表現する強さも持っている。

 儚く強いヒロインは魅力的だ。彼女たちに惹かれ、幸せを願った読者は多いだろう。

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