■作中屈指の強キャラ同士の絆「飛影と軀」
次に紹介するのは、本作屈指の強キャラたちである飛影と軀だ。
黄泉・雷禅と肩を並べ、魔界を治めていた軀。その戦力として引き抜かれたのが飛影だった。はじめは天と地とも離れていた2人の力であったが、はじめから軀は飛影を目にかけていた。とくに飛影の母親の形見である“氷泪石”により、互いの過去の記憶を共有しているという点が大きいだろう。
その後、すさまじいスピードで力を付け、魔界統一トーナメント直前までには軀の片腕となるまでに成長した飛影。しかしときには、軀の過去のトラウマを持ち出し、彼女の逆鱗に触れ手痛い一撃を喰らうことも。その際、蔵馬からは「痴話ゲンカですか?」と冷やかされる場面もあった。このシーンは恋愛下手な飛影が、初めてできた彼女の愚痴を親友にしにきたようにも見え、個人的に大好きなシーンだ。
ちなみにその後、飛影は軀のトラウマの原因であった父親の痴皇を捕らえ「好きなだけ切り刻め」と彼女の誕生日プレゼントとして送っている。軀のご機嫌も戻ったことだろう。
飛影と軀のカップルは、先に紹介した2組に比べると恋愛描写こそ少ない。しかし『幽☆遊☆白書 公式キャラクターズブック 霊界紳士録』(集英社)において、原作の富樫氏が軀について“飛影が付き合うならどんな相手がいいだろうか、などと考えながらできたキャラ”と語っており、先の2組に負けないくらい特別な関係だと言えそうだ。
■アニメオリジナルの展開「左京と桑原静流」
最後に、左京と桑原静流というアニメオリジナルのカップルを紹介したい。
闇のクラブ、B・B・Cのメンバーにして、暗黒武術会における戸愚呂チームのオーナーであった左京と、桑原和真の姉・桑原静流のカップルだ。「暗黒武術会編」アニメオリジナルの展開だが、妖怪絡みのトラブルに左京から2度にわたり助けられた静流。そのことがきっかけで左京のことが気になり始めるのだった。
そしてアニメ第65話「闘技場と共に消える野望」にて。戸愚呂弟が敗れると、左京は闘技場の爆破スイッチを押す。すべてが崩れ行くなか、左京のあとを追った静流は、コエンマと最後の話をしている左京のもとに現れる。そして、左京も何か思うところがあったのだろうか、形見として自身のイニシャル入りのライターを静流に渡すのだった。
わずかな時間で惹かれ合った2人。左京は常人離れした人物であり、静流も弟・和真以上に強い霊感の持ち主だ。お互いの只者ならぬ雰囲気に一瞬で惹かれ合ってもおかしくない。アニメオリジナルの展開ではあるが、興味深い人間関係であった。
『幽☆遊☆白書』の「その後が気になった2人」4組を振り返ってきた。幼馴染同士の王道カップル、一途な片思い、強キャラ同士の絆、そしてアニメオリジナルの意外な組み合わせと、どれもが個性豊かで魅力的だ。
本作は王道のバトル漫画でありながら「恋愛」というもう一つのテーマでも読者の心を掴んできた。あらためて『幽☆遊☆白書』は、今なお語り継がれるジャンプ黄金期の傑作であると思う次第だ。