武内直子氏原作による変身ヒロインアニメの金字塔『美少女戦士セーラームーン』。主人公である月野うさぎことセーラームーンを始め、作中に登場するセーラー戦士たちはみな美しく、女子のハートを鷲掴みにしていた。
セーラー戦士は物語が進むにつれ増えていき、次第にファンの間では今で言う“推し”戦士もできていく。とりわけ人気が高かったのが、セーラーマーキュリーに変身する水野亜美である。ショートヘアでビジュアルも可愛らしい彼女は、セーラームーンが初めて出会う仲間として8話で初登場を果たした古参キャラだ。今回は、当時爆発的人気を誇った水野亜美の魅力を振り返ってみよう。
■お淑やかなだけじゃない!水野亜美の魅力を深堀り
濃青色のショートヘアが印象的な水野亜美。初登場は、前述の通りアニメ8話である。当初からエナジーを放っていたことでルナから妖魔ではと疑われていたが、その後妖魔の攻撃を受ける中でセーラー戦士の力に目覚めた。
スペックは登場人物の中でも突飛して高く、趣味は読書・チェス、将来の夢は医者という才女だ。さらにIQは300もあり、全国模試では常にトップクラスをキープ。勉強が苦手なキャラが多いセーラー戦士の中では、異端なキャラといえよう。さらに毎日勉強漬けながら、ゲームをすれば初見でハイスコアを叩き出してゲーマーのうさぎを驚かすという実力の持ち主でもある。
一方、頭の良さに加え控えめな性格とお金持ちという要素が妬みを買い、友人に恵まれていなかった亜美。しかし、仲間が増えるにつれ、積極性や社交性が磨かれ生き生きとした表情を見せるようになっていく。うさぎたちに遊ぶ楽しさを教えてもらい、笑顔が増えていく亜美の姿は可愛いらしかった。
天真爛漫なうさぎ、気が強い火野レイ、ボーイッシュな木野まこと、明るい愛野美奈子と、どちらかといえばセーラー戦士にパワフルなタイプが多いというのも、おとなしくて女の子らしい性格の亜美の人気が高まった要因の一つかもしれない。
ただ、亜美も基本的に芯が強く物事をはっきり言うタイプなので、時にシビアな言葉を投げかけ他のメンバーをタジタジさせることも。そんなギャップもまたファンには魅力的に映ったことだろう。
■スピンオフも!人気が爆発した90年代
90年代、水野亜美の人気は凄まじいものだった。もちろん『なかよし』紙面の人気ランキングではセーラームーンが1位を取ることが多いのだけど、それ以外では亜美の人気がうなぎ登りに高まっていた。
セーラームーンとの違いは、やはり男性ファンが多いということだろう。キャラデザを担当した只野和子氏も、当時のインタビューで男性からの亜美人気の高さに対し、「男の人にとっての理想的な女の子なのかなという気もします」と答えていた。
それが顕著に現れていたのが各種アニメ雑誌だ。最も有名なのが『アニメージュ』(徳間書店)である。同誌の表紙を飾るのは主人公などが多いのだが、亜美は1992年12月号にて表紙及び巻頭特集を組まれていた。プライベートを満喫する亜美のイラストが掲載され、ファンは大いに沸いたものである。
同誌においては、たびたび「今月のベスト10キャラ」で他のキャラを抑えて1位を獲得しており、「第15回アニメグランプリ」でも堂々の1位に輝いている。また、『月刊ニュータイプ』(角川書店、現KADOKAWA)では1993年3月号に単独表紙を飾り、ここでも人気ランキング1位を獲得している。
ちなみに、アニメでの決めセリフ「水でもかぶって反省しなさい!」も、『アニメージュ』の企画「第1回セーラー大賞」で一般公募の中から選ばれたものだ。普段のおっとりした姿と打って変わって鋭い言葉を発する姿にドキッとする見事なセンスである。
さらに、亜美を主人公にしたスピンオフ短編作品『スペシャルプレゼント 亜美ちゃんの初恋 美少女戦士セーラームーンSuperS外伝』も制作された。これは雑誌『るんるん』(講談社)に、『まこちゃんのユーウツ』『レイと美奈子の女子高バトル』とともに掲載された読み切り漫画をアニメ化したもの。
1995年に劇場版セーラームーンと同時上映されており、模試1位を競う謎の人物“メルクリウス”に想いを馳せる亜美を描いたファン悶絶のストーリーとなっている。