覆面作家・雨穴氏によるミリオンセラー小説『変な絵』(双葉社)の文庫版が2025年1月16日に発売。同日、東京・日本外国特派員協会にて記者会見が行われた。雨穴氏がマスコミの前に姿を見せるのは初であり、音声はボイスチェンジャーを通して語られた。
雨穴氏は年齢や性別など一切が非公開の小説家で、YouTuberとしても活躍。2022年10月に刊行した『変な絵』はコミック版と合わせて累計120万部を記録し、世界30地域での翻訳出版も決まり、世界的なミリオンセラー作品になっている。
海外メディアの記者も取材に訪れた今回の会見で、雨穴氏は「ナイストゥミーチュー、マイネームイズウケツ」とあいさつすると、「せっかくなので本日、英語でスピーチをしたいと思います」と、20分に及ぶ英語でのスピーチを行った。
自身の略歴を紹介した雨穴氏は、なぜ『変な絵』が幅広い世代に受けているか3つの理由を挙げて説明。漫画やゲームに慣れ親しんだ若者たちも手に取りやすく工夫されている「読みやすさ」、自分の本を選んでもらうための「YouTube」の活用と宣伝の方法、そして日本の若者の間で「ホラー」がブームになっていることを挙げ、「日本も含めて悲しいことばかりで大変な時代である中、若者たちが不安な空気に対処するために自身が描く不安な物語に目を向けているのかもしれません」と語った。
全身黒タイツをまとい、頭部には目と口の部分にのみ穴の空いた真っ白い仮面をつけた雨穴氏。世界的にも珍しいビジュアルをしたベストセラー作家に、海外メディアから「なぜこのような見た目に決めたのか、まじめな本の内容にそぐわないのでは」と質問。
それについて雨穴氏は、「仮面を脱ぐと実は国民的大スターであったとかは全くなく、そしておそらく(素顔を隠さなかればならない)犯罪者でもない……と思います」と説明。そして「見た目と書く内容が乖離しているというのは自分でも気になっていまして、もうちょっと真面目な格好にしたほうがいいんじゃないかと思ったこともありました。ただ出版社の方から聞いた話では、本の帯に雨穴のビジュアルを掲載して以降、売上が伸びたという報告を受けたこともあり、であればこのままでいいのではないかと思った次第です」と語った。
また、「このような見た目であるならもう少しおかしくすべきではないか」と質問があると、「今、緊張をしているので硬くなってしまっていたのですが、自分のビジュアルにあわせて、一応“踊っておきます”」と突如ダンスを披露する場面もあった。
海外翻訳され、さらに世界を広げていく雨穴氏の小説世界。雨穴氏は「画像と文章が組み合わさった小説のスタイルというのは海外でも珍しいと聞いております。もともとウェブライターをやっておりまして、このスタイルは日本のウェブメディア特有のものではないかと思っております。そうした点で、日本の文化を海外の方たちに楽しんでいただけるのではないかなと考えております」とアピールした。
なお、発売された文庫版『変な絵』には、“新コンテンツ”も追加。雨穴氏が制作協力し、現実と仮想の間の曖昧な領域に物語を紡ぎ出すクリエイター集団・第四境界が制作した『変な絵』の『ナゾ解きゲーム』と、49ページの書き下ろし前日譚『続・変な絵』が収録されている。